Mr.兄弟自営業であるMr.兄弟の経営は全てエルが担当している。と言っても開業届けなど出す意味も受け取る所もないような職業なので、やる事は舞い込んでくる依頼の選別と資金の管理程度。なので仕事内容と報酬金額が釣り合わないものや、『任務達成後の自分達の立ち場が危うくなるような条件の仕事』などはエルは一切引き受けていない。文句を付けてきたら黙らせればいいだけの話であり、ザ・ノアールを抜けた後から始めたこの営業スタイルは変動なく続けられていた。
しかし。
「これ、今日の仕事」
「ん〜?」
朝、一日の始まりの時間。シリアルを頬張って朝食を取っていたシグマへ、先に朝食を終わらせてコーヒーを啜っていたエルは依頼書を投げ付けた。シグマはスプーンは決して離さず、空いていた左手で依頼書を手繰り寄せて読み始める。内容はとある組織の壊滅依頼で、報酬金額はこちらの提示している金額の底辺であった。
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