私は羽京先生が好きだ。家族とか友達に向けた“好き”じゃない。結婚したいの“好き”。そう、私は羽京先生のお嫁さんになりたい。
　他にも同じ想いを持ってる子はいるけど、あんなのは尊敬と恋を履き違えてるだけだ。私のはちがう、村長の言葉を借りれば“百億%”純粋な恋だ。
　だってあんなにも優しい綺麗な顔をしているのに、性格まで優しくて綺麗で、その上まあまあ強くて狩りがうまいのよ。頭もいいし、そんなの好きになるに決まってるじゃない。あんな人、出会ったことない。
　絶対羽京先生のお嫁さんになる。その一心で色々と努力した。まず見た目が可愛い子が好きかもしれないと思って、キラキラ三姉妹におしゃれを教えてもらった。おかげでただの村の子からモテる村の子になった。
　それから料理のうまい子が好きかもしれないと思って、村のおばあちゃんたちやフランソワに料理を教えてもらった。おかげでガンエンからモテ始めた。羽京先生じゃないからスルーしてるけど。
　さらに羽京先生は先生をやってるほどだから、頭のいい子が好きなのかもと思って、誰よりも勉強した。おかげで先生たちが忙しいときは、私が教えられるほどになった。
　他にもコハクに武術を教えてもらったり、スイカに自然を教えてもらったり。とにかく少しでも羽京先生に好かれるためがんばった。
　なのに。あんなにがんばったのに。まさか羽京先生にもう恋人がいるなんて……！どこの女かと調べてみれば、なんと相手は七海龍水。男じゃない！なんで！？
　羽京先生、だまされてるのよ。そいつは男よ、子を生せないのよ。子どもがいないと、途絶えてしまうのよ。いいの！？
　そう言ってやろうと思ったけど、先生の顔は恋の顔をしていて言えなかった。綺麗な顔が龍水の前だとますます綺麗になってた。龍水も先生の前ではきらきらしてる。二人ともしっかり両思いなんだ。
　私が告白したって、フラれるだけだ。羽京先生は優しいから、断るときも断った後もきっと悲しい気持ちにさせちゃう。そんなの、私はいや。だって先生が好きなんだもの。好きな人を悲しい気持ちにさせるなんて、子どものすることだわ。
　でも、だからといって諦めたくもない。そこで私は閃いた。私が、七海龍水になればいい。私と龍水がほぼ同じになれば、私にもチャンスがあるかもしれない。これまで数々の努力を積み重ねてきた私だもの。絶対にできるわ。見てなさい、七海龍水。そうやって先生の隣で笑ってられるのも今だけなんだから……！