相合傘「ここで一句」
「ど、どうぞ」
タリアさんの急な話題転換に戸惑いながら返事をする。
「相合傘 濡れてる方が 惚れている」
「…えっ、あ、これはそのっ!」
どこかで聞いたような言葉だけど、自身の濡れた肩を見て俺の事を言及されているのだと気づく。
「貴方は優しいから。きっと、誰と相合傘しても、濡れるんでしょうね。」
「そんなことは...」
「あるわよ。私にはわかるわ。おばあちゃんを入れても貴方は濡れてるわよ。」
「...だとしても、おばあちゃんには惚れてないよ。善意からだよ。」
「それも知ってるわ。」
少しだけ考え込んで沈黙になる。その間の空白は雨が埋めてくれるので、ありがたい。
「......でも、タリアさんには善意以外の気持ちも含まれてます。」
「うーん。はっきり言ってくれなきゃ、私わからないわ。」
好意を口に出すのは苦手ではないはずなのに、彼女の前ではどうも口下手になってしまう。
「えっと、そのー...つまり、タリアさんが雨に打たれるくらいなら俺が打たれたいし...」
「マックスくんは雨を独占したいのね。」
「え、違う違う!そうじゃなくて!」
「ふふ じゃあ、何?」
「...本当にわからない?」
恐る恐る彼女の本心を探るように瞳を合わせると、ふわと優しく見つめ返される。
「わかってるわ。でも、貴方の口から聞きたいの。」
「......俺は、君に惚れて…ます。」
嬉しいわ、と満足気に笑う彼女を横目にかなわないなあと思った。