原始から存在していたわけでもないのに、また、意図してそのように作ったわけでもないのに、人間の本能的な危機意識にがりりと爪を立てる音が何種類かあると思っている。多分、これがその一つだ。
長く、高く引きずるブレーキの悲鳴。
犬が吠える。二匹、三匹。雑多に。
リゾットは少しだけ目を開いた。
助手席のホルマジオが身じろぐ。
後を追うように、エレクトリックなイントロがカーステレオから這い出す。
「ラジオだぜ、今の」
ホルマジオが話しかけてきた。
「寝不足かよ?リゾット」
半分……よりも寝ているに近かったかもしれない。否定するには分が悪かった。
「悪趣味だろう。ブレーキ音がイントロに入っていて楽しいやつがいると思うか?」
ホルマジオが苦笑いする。
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