とらみみてとら とにかくまずい状況だ。
自室の洗面所の鏡に映る自分の姿を見て夢なら早く醒めてくれと鉄虎は願った。こんなことが現実であってたまるものか。
鏡に映るのは見慣れた自分の顔。視線を上に向けると頭部からひょっこりと出ているのは外側に向いたりしてぴくぴく動く耳。本来ならば顔の横についているはずの耳が頭についているのだ。そして何故か、尾てい骨あたりから尻尾も生えている。丸みを帯びた形状の耳、縞模様の尻尾から予測すると、これらは虎のものだろう。自分の名前の一部の動物であるため愛着のある動物だったけれど、こんな奇妙な現象が起こってしまっては好きな動物だから、などとは言っていられない。頭部に生えた耳、ボトムスからはみ出た尻尾に触れると柔らかい毛の感触に、これが現実なんだと思い知らされる。自分の身体が部分的に獣化してしまった──だなんて一体誰が信じるんだろう。
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