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    kaina_rntn

    煉炭🔥🎴好きの小説書きです

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    kaina_rntn

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    ・原作軸(生存IFではないです)
    ・要視点の煉獄さんとの出会いから別れまでのお話
    ・色々と勝手に設定を盛ってます
    ・煉炭と言い張りたい

    炎の追憶~要~ 鎹鴉は雛の頃から人の言葉を覚える訓練を叩き込まれ、鬼殺隊の指令伝達という使命の為に育てられた烏だ。
     鎹鴉は産屋敷家が特に優れた知能を持つ烏をかけ合わせ品種改良した烏であり、連絡伝達の他、新人隊員に鬼殺隊としての教育をすることもあるため非常に厳しく飼育される。その中でも特に優秀な烏が実戦投入され最終選別を突破した新人隊員に相棒として付くこととなるのだ。
     要は卵から孵化してから二年で鎹鴉となり、これまで二人の隊士の鎹鴉として任務をこなしてきた烏である。
     最終選別を生き残ることが出来る子供は一握りだ。しかし晴れて鬼殺隊の隊員となった子供達も実戦となると生き残れる者は更に限られていく。これまで要が担当した二人の隊士は階級癸のうちに血鬼術を使う鬼に殺され亡くなった。鎹鴉の最後の仕事は訃報を伝えることだ。短くとも相棒として行動を共にした人間が死ぬのは悲しいことだった。しかし悲しんでばかりではいられず、主を失った烏はまた次の主に仕える為に次の最終選別まで本部で訓練をしながら待機するのだ。
     そして訪れた最終選別最終日、今回の選別は三人が生き残ったらしい。そう思いながら最終選別に生き残った三人の内、燃えるような髪の少年の肩へと要は降り立った。
    「君が俺の鎹鴉か、俺の名は煉獄杏寿郎だ! これからはよろしく頼む!」
     人の言葉を話す烏に全く驚くこともなく大きなハキハキとした声でそう言い放った少年は選別試験後だというのにほぼ無傷で笑っていた。
     鬼殺隊に入隊する子供は基本的に仇討ちの為に血反吐を吐くような修行を積み、制止をかけた試験へと挑む。それを突破した子供たちは消耗し、それでもこれから鬼狩りへとなる未来に向け悲壮感を漂わせていることが多いというのに、この少年は異質だった。
    「カァ! 私ノ名前ハ要デス。ヨロシクオネガイシマス、杏寿郎様」
    「共に頑張ろう、要!」
     これが後の炎柱であり、長年の相棒との出会いであった。



     相棒である煉獄杏寿郎は現役の柱の嫡男であり、父親の鎹鴉の世話をしたこともあるのか要の扱いにも鬼殺隊がどういう組織なのかもほぼ把握しており新人としては非常に優秀な隊士だった。実際に共に行動してわかったことだが杏寿郎は強い。柱の嫡男ならば相応の鍛錬も積んでるはずだから当然だと最初は思っていたが、どうにも様子がおかしい。
     初任務の際に生家へと立ち寄ったが、父である炎柱は杏寿郎を顧みることはなかった。
     それは両耳の鼓膜を破る怪我を負い帰ってきたときも同様だった。そして杏寿郎はそれを少し寂し気に受けてめていた。
     それでも彼は鬼を狩り続け、気が付けば階級は一般隊員最上位の甲となり立派な青年へと成長していた。
     多少己を顧みないところがあり怪我はしがちであるが杏寿郎は強い。面倒見のいい性格から後輩の隊員からも慕われ、酒浸りとなり碌に任務も受けなくなった炎柱よりも彼こそがふさわしいのではという噂は専らだった。しかしまだ柱となっていないのはひとえに十二鬼月と遭遇していないためだ。下弦の鬼ならば倒せるほどの実力は持ちながらもこればかりは巡り合わせだと杏寿郎は淡々と任務をこなしていた。
     要にとって誰からも慕われるような自慢の相棒だったが、それでも彼の父は杏寿郎を顧みることはない。彼はいつも、どこか孤独だった。
     せめて彼のそばに誰かが支えてくれたなら、共にいてくれたなら――そう思う日は幾度となくあったが杏寿郎という男は夜遊びすらせず女気の一つもない。そんな杏寿郎にも甘露寺蜜璃という少女の弟子がついた。最初は嫁になるのかと思っていたが拍子抜けするほど何もなく、稽古をつけ、世話を焼き、共に戦うことも多くなった。
     そしてある帝都での任務の際、ついに下弦の弐と遭遇した杏寿郎は柱となった。
     柱となって父上に認めてもらいたい、そう漏らしていた杏寿郎にとって目標の一つだった炎柱就任に、要も喜んだ。しかし、それでも父親は杏寿郎を顧みることはなかったのだ。
     継子となった甘露寺も杏寿郎の指導の成果か新たなる呼吸を身に着け、独立することになった。杏寿郎は見どころのある隊士に稽古をつけ指導をしていくが継子には恵まれなかった。稽古が厳しく逃げ出す隊員ばかりだったからだ。
     広々とした稽古場で淡々と木刀を振る杏寿郎の背を要はいつも観ていた。彼是五年以上も行動を共にしてきた相棒だから彼のことはそこらの人間よりもわかっているつもりだ。
     杏寿郎は『煉獄杏寿郎』としての役割を全うしてる。『煉獄杏寿郎』として求められることを完璧にこなす彼は、心から自分の心の思うが儘に生きたことはあるのだろうか。人前では見せることのない愁いを秘めた彼のうつむく顔は、きっと誰も見たことがないだろう。しかし烏に出来ることなど寄り添う程度のものだった。

     半年に一度の柱合会議の日、会合を終えた杏寿郎は珍しく楽し気に要へと一人の隊士の話をしてくれた。
    「面白い少年がいてな! 不死川に一歩も引かないあの負けん気、あの素晴らしい頭突きと伊黒に肺を押さえこまれながらも縄を引きちぎった呼吸、打倒鬼舞辻を堂々と言い放つあの心意気! 是非継子に迎えたい‼」
     ここまで、誰かのことで昂っている杏寿郎を要は久しく見たことがない。隊士を稽古に誘うことはよくあることだが、いつもはここまで熱心ではない。あれほどの才能を持った甘露寺すら去る者追わずだった杏寿郎には似つかわしくないほど、執着じみたものを感じる。
    「連レテクレバ良カッタデハナイデスカ」
    「まだ怪我をしているし、日輪刀も折れたらしい。今は蝶屋敷に任せた方がいいだろう!」
     今は、ということは今後必ず継子に迎えると宣言したようなものだ。杏寿郎は判断が早く悪く言えばせっかちなところはあるが、強引なわけではないはずなのだが。
    「次の任務がひと段落したら文を送ろうと思っている! お前にも協力してもらうことになるだろう、頼んだぞ!」
     そういって杏寿郎は次の任務へと向かう。
     乗客が行方不明となる、ある列車の調査任務であった。



     夜を駆ける列車を追いかけ、要は飛んでいた。肉に包まれた蒸気機関車は鬼の襲撃を受けていることに間違いない。それでも杏寿郎ならやり遂げるだろうと要は懸命に追いかけていた。
     長らく走り続け、寅の刻に差し掛かろうとしたその時である。先頭車両から円を描くかの如き真っ赤な炎が上がり、巨大な鉄の塊である機関車が真っ二つに斬られ、列車は横転し暴走列車はついに止まったのである。大惨事ではあったが客車内で炎の呼吸で衝撃を吸収し被害は最小限に食い止めたようだ。負傷者は多数だが死者はなし、これにて一件落着ということで隠への連絡の為に飛び立とうとしたその時だった。
     ――上弦の鬼が飛来したのである。

     要は救援を求め全力で羽ばたき、夜の空を飛ぶ。十二鬼月の中でも上弦は柱すら単独で出会えば死は免れないと言われる鬼だ。杏寿郎は強い、しかし夜通し任務で戦った後の上に負傷者を守りながら戦うだろう。一刻も早く増援が必要だった。
     うっすらと白じんでいく空に、太陽よ早く上がってくれと祈るように空を飛んだ。
     その時、下方に列車任務の後方支援に向かう隠の姿が見えた。
    「隠ー! コレヨリ北方五里先! 炎柱煉獄杏寿郎上弦ノ参ト交戦中! 至急増援願ウ‼」
     隠は大慌てで鎹鴉を放ち、そして要は大急ぎで戦場へと戻っていく。生きてくれ、杏寿郎。ただそれだけを願い懸命に羽ばたいた。

     ――そして、夜が明けた静かな戦場へと要は戻ってきた。
     血に濡れた相棒は、泣きじゃくる一人の少年へと最後の時間を使い、託を託していた。
     穏やかに眠りにつく杏寿郎を見届け、要は涙をこぼしながらも飛び立った。
     鎹鴉の……最後の任務を果たすために。



     無限列車の任務から十日が経った。葬式と七日法要を終え、鬼殺隊本部も煉獄家も随分と静けさを取り戻していた。
     柱付きの鎹鴉だった要も任務の詳細などの報告で随分とあわただしい日々を送っていたがようやく落ち着きを取り戻していた。だが、思い出すのは杏寿郎の事ばかりだ。
     鬼狩りに明け暮れるあの子に、幸せになってほしかった。
     寂しさを秘め心を燃やし続けたあの孤高の青年に、心の底から笑って欲しかった。
     この任務を終えたら、彼は継子にしたいと言っていた少年に文を送りたいとしきりに言っていたのを思いだす。そうしてやれたならどれだけ良かっただろうか。もうそんな未来は訪れないとしても、杏寿郎の意志をその少年へと託してやりたかった。たとえそれが要の自己満足だったとしても。
     本部にいる隠達一人一人に先の柱合会議の顛末を知っている者はいないかと要は聞き込みを始めた。知らぬ存ぜぬばかりの中、後藤という隠が柱合会議の場に控えていたと聞き、要は彼の元へと飛んだ。
    「ああ、あの時の柱合会議な……一生忘れらんねぇよ」
     鬼を連れた剣士の処分を巡りお館様と柱が対立したその柱合会議でこともあろうことか風柱に頭突きを叩き込み、そのうえで打倒鬼舞辻無惨を高らかに宣言した隊士がいたという。間違いない、杏寿郎が言っていたのはその隊士だった。
    「ソノ隊士ノ名前ハ? 今ドコニイル?」
    「竈門炭治郎だ、市松模様の羽織に花札みたいな耳飾りの……また大怪我してたからな、蝶屋敷にいるんじゃないか」
     竈門炭治郎、その隊士の名は要も知っている。
     なんという事だろうか、最後に杏寿郎を看取ったあの隊士こそが頭突きの少年だったのか。
    「――託セタノデスネ、杏寿郎様」
     ならば、私が導いてやらないと。最後の最後に、もう一つ仕事ができた。バサリと黒い翼を羽ばたかせ、要は飛ぶ。

     炎の遺志を継ぐ、少年の元へと――
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    kaina_rntn

    SPUR ME・原作軸(生存IFではないです)
    ・要視点の煉獄さんとの出会いから別れまでのお話
    ・色々と勝手に設定を盛ってます
    ・煉炭と言い張りたい
    炎の追憶~要~ 鎹鴉は雛の頃から人の言葉を覚える訓練を叩き込まれ、鬼殺隊の指令伝達という使命の為に育てられた烏だ。
     鎹鴉は産屋敷家が特に優れた知能を持つ烏をかけ合わせ品種改良した烏であり、連絡伝達の他、新人隊員に鬼殺隊としての教育をすることもあるため非常に厳しく飼育される。その中でも特に優秀な烏が実戦投入され最終選別を突破した新人隊員に相棒として付くこととなるのだ。
     要は卵から孵化してから二年で鎹鴉となり、これまで二人の隊士の鎹鴉として任務をこなしてきた烏である。
     最終選別を生き残ることが出来る子供は一握りだ。しかし晴れて鬼殺隊の隊員となった子供達も実戦となると生き残れる者は更に限られていく。これまで要が担当した二人の隊士は階級癸のうちに血鬼術を使う鬼に殺され亡くなった。鎹鴉の最後の仕事は訃報を伝えることだ。短くとも相棒として行動を共にした人間が死ぬのは悲しいことだった。しかし悲しんでばかりではいられず、主を失った烏はまた次の主に仕える為に次の最終選別まで本部で訓練をしながら待機するのだ。
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