まともな人庵歌姫という人物は、呪術高専において最もまともな部類の人間だった。
呪術師などというものは、基本的に皆どこかしらイカれている。頭のネジが何本か飛んでいるのだ。
幼い頃から見えないものが見え、人が理不尽に傷つけられるところを見ながら育つのだから、これはもう仕方のないことだろう。
だから、『まとも』である庵歌姫という人物は、まともであるが故に異質でもあった。
なぜかイカれたやつほど強い呪術師の世界で、彼女はひどく頼りなく見えるのだけれど、私は、この世界で『まとも』な彼女をとてもとてもあいしている。
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「派手にやってますねぇ。私の出番はなさそう」
手持ち無沙汰になり、一服、とでも思ったが、さすがに先輩の手前やめておいた。代わりに、ポケットに入れておいた飴を口に放り込む。
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