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    BON_bbb517

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    ねずみがチョコ全部食べた話

    大失敗バレンタイン あいかわらずコルサさんはリーグ本部で開催されるジムリーダー会議へ出席したがらないので付き添いとして私もリーグまで出向いた。もちろん会議には参加できないので私は外で待つことになるのだけど「ここでお待ちください」と指示をされた休憩室にハッサク先生とアオキさんがいた。
     休憩室に設置されたテレビにはバレンタイン特集という映像が流れており、いろいろなチョコレートが次々と紹介されている。そうか、バレンタインが近いのか……。そんなことを思いながらも椅子へ腰を下ろし、ぼんやりと液晶を見ていれば「ユリくんも興味があるのですね」と声をかけられた。
    「甘いものは好きなので」
    「はは、小生もですよ。どのチョコレートも宝石のように輝いていて美しいですね。まるで芸術作品のようです」
     バレンタインのチョコレート……。先生たちやポケモンリーグにはお世話になっているし、今年は贈ってみようかな?いや、でも義理チョコってもらって嬉しいものなのかな?
     少し気になったので疑問をそのまま尋ねてみれば、さっきまで黙っていたアオキさんは急に口を開き「たとえ義理だとしても季節感を感じますから悪い気はしません。チョコレート自体も好きです」と、先生は「この年になるとイベントごとには疎くなりますから義理でもうれしいものですよ」とにこやかに返す。
     うーん、これまでバレンタインは友達と交換するだけだったけど、もらって嬉しいんなら用意してみよう!そう意気込んだとき、ハッサク先生が「まあ、小生たちよりもコルさんを優先してください」と補足でもするように人差し指を立てた。
    「コルサさんを?」
    「ええ。あなたからのチョコレートならばきっと飛び上がって喜ぶはずですよ」
    「あの人、チョコレートが好きなんですか?」
    「というかユリくんが好きなのですよ」
    「お、おあ……」
     あまりにもストレートな言葉につい黙ってしまうも、それとほぼ同じタイミングで「ユリさん、会議が終わりましたよ」とオモダカさんが知らせに来てくれた。
    「本日もご足労ありがとうございます。あなたのおかげで会議もスムーズに運びました」
     オモダカさんはそうニコニコ笑うのだけど、そのすぐあと「ところで、バレンタインの話をしていましたか?」なんて首を傾げてきた。
    「し……してましたけど……?」
    「そうでしたか。念の為お伝えしておきますが、義理でも本命でも、あなたからいただけるチョコレートでしたら私はどんなものでも嬉しいです」
    「なんでもらえると思ってるんですか?」
    「なんで?それは私とユリさんが”お友達”だからですよ」
     オモダカさんはそう得意げな顔をすると「14日は私からもチョコレートを用意しておきますのでぜひリーグへいらしてください」「それとも、私からご実家へ伺いましょうか?」なんて嘘か本当か分からないことを言い出したため「私がリーグへ行きます!」と慌てて返した。

     バレンタイン……。コルサさんが喜ぶんならあげたいけど、どんなものが好きなんだろう?第一、甘いものって好きなのかな?この前ムクロジに行ったとき、コルサさんは私のパフェを一口食べただけであとはコーヒーを飲んでたし。
     そんなことを思いながらもバレンタインの前日にボタンとネモに相談をしたら「そんなの手作り一択じゃん」と即答された。
    「食べてくれるかな」
    「コルサってユリのことが相当好きなんでしょ?もらって喜ばないわけない。喜ばなかったらたぶんニセモノ。」
    「うんうん、絶対喜ぶよ!渡しちゃえ!」
     ふたりにそうけしかけられたため、私たちは購買部でチョコレートの材料を買い、さっそく家庭科室へ。残念なことにネモと私は料理の経験があまりないどころか小さじと大さじの違いも分からないのだけど、見かねたボタンがいろいろ調べながら手伝ってくれたのでなんとかコルサさん用のチョコレートは完成した!

     そして迎えた2/14 バレンタインデー。コルサさんには手作りのチョコレート、ほかの人にはお菓子屋さんで買った小さいチョコレートの詰め合わせを用意した。
     まずは学校の先生たちに配ったのだけど、セイジ先生は私のチョコレートを見た途端に「これ知ってるよ!義理だね!」と目をキラキラさせた。恥ずかしすぎる!とあわあわしてしまうも、セイジ先生はそんなのお構いなしに私のチョコレートをいろんな角度から見たあと「ユリ、ベリベリサンキューだよ!来月の3倍リターン、期待しててね!」と親指を立ててくれたので喜んではくれたんだと思う。
     それからはリーグへ向かえば、アオキさんとポピーちゃんがロビーにいたのでふたりにそれぞれ渡す。アオキさんは「どうも」とすんなり受け取り、ポピーちゃんは「ポピーもユリちゃんにあげますの!」と傘の形をチョコレートをくれた。
     でも、問題はそのあとやってきたオモダカさんだ。だって彼女は私のチョコレートとは釣り合うわけないくらい豪華なチョコレートボックスを平気な顔で渡してきたから。さすがになにかの間違いかと思い「すっごく高そうですけど」と言ったのだけど、彼女は「ほんの気持ちですから」と怖いくらい綺麗に笑いかけたのだった。

     さて、チョコレートを配り終えた私はコルサさんの家に帰り、彼にあげる用のチョコレートの確認をしようと思ったのだけど、悲劇が起きていた。
    「なんで食べちゃったの?!」
     そう、私のデデンネがコルサさんのチョコレートを食べてしまっていたんだ。ビリビリに破かれた包装紙と、からっぽのチョコレート箱に絶望しながら口元をチョコまみれにしたデデンネに訴えるも、デデンネはなにも反省していないのかいつも通りの可愛い顔をしている。
     本当は叱りたいけれど、どんなに怒鳴ってもチョコレートはもう帰ってこない。だから代わりになるチョコレートを求めボウルタウンのお菓子屋さんに駆け込んだけれど、バレンタイン商品はどれも売り切れ。
     事前に買っておいた義理チョコは全部配っちゃったし、このままじゃコルサさんの分のチョコレートがなくなっちゃう!もうチョコレートならなんでもいい、とコンビニに駆け込んで代わりを用意したけれど、買えたのは全然可愛くない板チョコだ。……ま、まあ、コルサさんはほかの人からもチョコを貰ってるはずだし、こんなチョコでも大丈夫だよね?

     だが、私の予想は外れた。
    私から「デデンネがチョコを食べてしまい、板チョコしか用意できなかったこと」を聞いたコルサさんはひどく落胆したようなため息をつくと同時にデデンネのほっぺを両手でつまんで「キサマはなぜワタシの邪魔ばかりする!」と叱り始めたんだ!(されてばかりのデデンネではないのでしっかりコルサさんの腕を噛んでいたけれど……)
    「……で、でもコルサさんはバレンタインにいっぱいチョコをもらってるはずだし、私のチョコがなくても、平気ですよね?は、はは……」
    「いや、チョコレートはもらっていない」
    「届いてないの?」
    「いくつかは届いていたようだがリーグ宛に届いた贈答品はすべてボウルのガキどもに寄付している」
     なんでそんなことを?と思っていればコルサさんは急に私の方を見て「君からのチョコレート以外は受け取らないことにしたのだ」と大真面目に告げてしまう。この人、私からのチョコレートをそんなに楽しみに…!?
     ショボい板チョコしか用意できなかった自分が急に恥ずかしくなり俯いてしまうも、コルサさんは「気にしなくていい、盗電を生きがいとするでんきねずみのしたことだ。チョコレート泥棒くらいもするだろう」と私を励ますように告げてから「このチョコレートは大切に食べるよ、ありがとう」とアトリエへ姿を消してしまった。
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