それぞれの道【パターン01:治がまだ自信持って言えなかった場合】
「ばっかじゃないの」
はっきりと言われた。顔を見て、目を逸らすことなく、真っ直ぐに。進路希望調査票。そんな紙切れが配られてクラスがざわつき出した頃、前に座る角名が振り返って訊いてきた。治、もう決めた?と。決めているもなにも、昔から思い続けてきたことだった。飯に関する仕事に就きたい。いつからなんて覚えてないけれど、ずっとずっと胸に秘めてきた。まだ誰にも、家族にも片割れにさえ言ったことのない秘め事。それを初めて口にしたのに、返ってきたのは冒頭の言葉。いや、正確には、違うけども。
もう決めた?と訊かれたから、飯の仕事をやりたいと答えた。やから、バレーは高校で辞めるとも。そう返したら、「ばっかじゃないの」ときた。
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