目をあければ如月新年を迎えたばかりと思っていたら、日常とは忙しなく過ぎるもので、居室の卓上に置かれたカレンダーを確認した長谷部は、日記に1月31日と書きつけた。
就寝前の習慣として、文机の前に座る長谷部の後ろでは、日本号が押入れを開けて布団を取り出している最中だ。睦月も終わりに差し掛かった、ここ数日の冷え込みは特に厳しく、空調がきいている本丸の中ですら、廊下に出ると、服に染み込んでくるような、冷たい空気に満ちている。だが、寒さというものは、長谷部にとっては、そこまでしのぎにくいものではない。冬の間、寒さを都合よく和らげてくれる槍は、毛布を足す事にしたようで、天袋を覗き込んでいる。
長谷部がこの旧知の槍と、情を交わす間柄になり、生活を共にするようになったのは、今から季節を三巡ほど遡った、秋の深まった頃だった。暮らし始めた当初、二口とも鍛えられた成人男性の器である事や、着く任務の違いによる生活時間のずれを考慮し、布団は二組敷いていたが、睦月を半ばも過ぎた頃から、朝起きると、日本号が長谷部の布団に潜り込んでいるようになった。
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