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    3_nosukee

    @3_nosukee

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    3_nosukee

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    夫に誕生日プレゼントとして強請ったクヌリンです。
    ゲームはブレワイプレイ済み、ティアは私の創作物からフワッと得た知識ですがとってもかわいいクヌリンを書いて貰いました…ありがとう。掲載許可貰ったのでシェアします🥳ヒュー!

    ほのぼのクヌリンある日のことだ。

    本当に、なんでもない日のことだ。

    「あっ! リンクさーん!リンクさんじゃないっスかっ!?」

    オイラは勇者様をお見かけした。

    ーーーー

    オイラはクヌギダ。
    エノキダ工務店に所属する、一工員だ。

    オイラはこう見えて意外と忙しい男である。
    昔から旅慣れしていることもあって、大工の手が足りていないところに適宜派遣されたりするからだ。

    あっちこっちとせわしない毎日ではあるが、趣味の温泉巡りも相まって旅好きなオイラは、さほど苦に感じない。

    この日も、次の現場へと向かう最中だった。

    「お? 硫黄の匂い」

    立ち止まり、目の前の森へと匂いを頼りに進む。

    すると程なくして目当てのモノを見つけた。

    「やっぱり、温泉っスね」

    そこにはオイラが愛してやまない湯の泉があった。

    地上に大穴が空いて以来、実は温泉が凄く増えた。
    おそらく地中が大きく動いた影響なのだろう。
    不謹慎すぎて口には出せないが、そこは密かに喜んでいる。

    ただ、新しく湧いた温泉のほとんどは、数週間のうちに枯れるようだ。
    地殻変動による、一時的なものなのだろう。

    つまりは一期一会の温泉という訳で、なれば絶対に……

    「入らないといけないっスよねぇ」

    幸い、次の現場への日程には余裕がある。
    一日くらいこの子と戯れても、問題はないだろう。

    ーーーー

    そうと決まればと、野営の準備を始めていた時だ。

    「リンクさん!あの、良ければ温泉、ご一緒しないっスか!?」

    たまたま、勇者様が通られたのだ。
    我らの英傑、リンクさんが。

    意外とだが。

    みんな、この人が世界のために戦っていることを知らない。
    一般人は普通に知らないし、監視砦のやつらも知ってはいても、イマイチピンときてない奴は多い。

    だけど、オイラは知っている。

    この人が、勇ましく鳥望台を飛んで行く様を。

    遠目にモンスターと戦っているのも目撃したこともある。

    凄かった。
    オイラたちとは違うと、一眼見てわかった。

    カッコ良かった。

    「この先にですね、いい湯加減のやつを見つけたんスよ!」

    だから。

    労いたいと思ったのだ。
    この、滅茶苦茶に格好良い勇者様を。
    世界のために戦ってくれてるこのお人を。

    オイラの、このちっぽけな感謝を伝えたいと思ったのだ。

    「あの、どうっスか?」

    もちろん、断られるだろうと思っていた。
    ダメ元だ。なにせこのお人は忙しいのだ。

    ーーーー

    「ね? なかなか良い塩梅でしょ?」

    了承されてしまった。
    いや、もちろん良いし、嬉しいのだけど了承されてしまった。

    しかも一緒に入ろうとまで言われてしまった。
    思ったより大分気さくでお茶目な人だった。

    「ええ、そうなんスよ。オイラ、温泉巡りが趣味で…」

    見惚れるほどに格好良い勇者様。
    だけど裸一貫で湯につかり、オイラのたわいもない話に付き合ってくれるこの人は……

    「…オイラの趣味、覚えててくれたんスね、へへ」

    ただの人間だった。
    英傑ではなく。

    「ああ、いい湯だなぁ。本当に」

    ただの人間が。
    あんなに勇ましく、格好良く、強く……

    戦ってくれているのだ。

    大きく見えるけど、意外と小さい、この人が。

    「あの、リンクさん……」

    なんと言えばいいのか。

    温泉の効能か、そうではないのか。
    体の芯が、火照ってこまる。

    「いつでもいいんで、また、その……」

    どうにも視線が定まらない。
    どこを見ればいいのか。
    湯あたりのような、違うもの。

    言って見ればいいのに、ダメ元で。
    さっき誘ったように。

    だけど、少し怖かった。
    断られるのが。
    ほんの数十分前とは、もう、違ってしまったから。

    だって、勇者様が人間と知ってしまった。
    憧れが、憧れのまま、違ってしまったから。

    ああ。
    温泉好きが、聞いて呆れる。

    オイラはこんなにも簡単に、のぼせてしまう奴だったのだ。


    「…………今度はどこに誘ってくれるの?」


    さまよっていた視線が、真横に定まる。
    オイラの真横で湯に浸かるその人に。

    「…っぅ!?」

    とんでもないモノを見てしまった。

    そこには、湯に髪が濡れた美人さんが、薄く微笑んでくれていた。

    温泉に、すこし上気した肌で。

    「っは、はい、ええっと」

    オレは必死で頭を回転させて、勇者様を誘うに相応しい名湯を考える。

    考えて…
    考えて……

    ああ。
    オイラは、とんでもないものを見てしまった。

    もう、ダメだ。
    完全に、違ってしまった。
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