あなたと同じ景色がみえる場所にいたい 悩んでいる暇も悔いている余裕もない。守りたい人を守れるように、強くなりたくて、毎日、追いつかない遠い目標に向かって精いっぱいだ。でも、ふとした瞬間に、底のない暗い渦に巻き込まれそうになる。
みんなから離れて、ちょっと木陰で休む振りをして、痛む胸を握りしめる。片手では足りないくらい、その暗がりが広がっていくのがわかる。
もう両の手では塞ぎきれなくなる頃、僕の右手は大きくてがっしりした手に包まれた。
「大丈夫? どこか痛むかい?」
声と気配とその気づかいだけで振り向かなくてもわかった。
日陰に侵蝕された日なたが、陰を押し戻していく。一瞬だけ、意識が飛んで、我に返るともう、足元の日陰が小さくなっていた。
1267