雨と日常「あ、雨」
手元で操作していたスマートフォンに雨粒がぽつりと落ちる。ちょうど指先が進む方向に降り注いだらしく、反応が間に合わず指先にまとわりつく水分のせいで画面が拡大される。天を仰ぐと太陽はまだ煌々と光り輝いており、気まぐれに現れた雨雲が些細な雨を降らせているだけのようであった。
阿久根は濡れた液晶画面を雑に服の袖で拭うと、再度画面へ目を向ける。緩やかではあるが強くなりつつある雨脚に、早々に連絡を終えてしまいたかった。市場には出回っていない特殊回線を使用するアプリを立ち上げ、いくつか並ぶリストを指先でスクロールして目当てのものを探す。
「う、ぐ…」
「…あれ、まだ息があったんですか。しぶといですねぇ」
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