寂しいわけでは、決して。##寂しいわけでは、決して
普段、眠れないわけでは無い。
ただ、今日は、月が綺麗だなと、ふと、海の音。細波が聞こえる縁側で少し晩酌でもしようと思った。それが、ほんの少しだけいけなかった。
1ヶ月と少し前だっただろうか。真島の兄さんがアサガオに訪れた。それは本当に突然で、朝一番。メールの着信音で起こされてなんだと眠気眼で携帯を見た。その文面に一気に目が覚めてしまった事はもう、当たり前だろう。
『今から2時間とちょいでそっち行くわ』
そのメール文に正しく兄さんが訪れた。
その時の月と同じ月を、ただ、部屋の窓から見ただけだ。
たったそれだけ。
月を見て、酒を飲み、お互い仄かに赤い顔で視線を絡ませて。それで…
それで。
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