赤ん坊ジャックの世話をするディーンの話「見上げた星は君への道標」 部屋中に響きわたる赤ん坊の泣き声に、胸が締め付けられそうだった。その子は、ただ生きるために泣いているようで。ディーンは構えていた銃を下ろすしかなかった。
サムが胸に抱き、懸命にあやしていたが慣れない手つきでは永遠に泣き止まないだろう。途方に暮れてサムまで泣きそうな表情でこちらを見つめるものだから、ディーンは持っていた銃を後ろに回しボトムスと腰の間に挟んでから歩み寄る。
「貸してみろ」
ディーンはサムが抱いている赤ん坊を覗き込んだ。ルシファーの子ども、と、一瞬身構えたがその子は顔を真っ赤にして泣き叫び懸命に何かに縋っている。手はディーンの親指を握るのがやっとなほど小さいし、泣き声に異質なパワーが宿っているわけでもない。普通の、人間の赤ん坊だ。ディーンの腕の中に移されると、まだ泣き続けていたが背中を優しく摩り続ければ絶叫から泣き崩れる声に変わる。
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