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    juju_amu

    呪術右伏雑食。呪はロム専の予定が萌が治らず書くことになってしまいました。よろしくお願いします。

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    juju_amu

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    年逆魔法学校パロ(五条悟十四、伏黒恵が十七歳)。日本にも魔法学校があるらしいので、捏造しました。恵に恋愛相手として意識して欲しい悟が頑張るお話。

    #五伏学園
    #五伏
    fiveVolts

    さとめぐクロニクル【前編】 まるで伝説に聴く霊鳥のように、ひらりと黒い翼が空から舞い降りて、悟の視界を覆う。眩し過ぎて、目が痛くなるくらいの春の青が静謐な影で塗り潰され、悟は美しい翠の輝きに吸い込まれるかと思った。
     
    「あーっ! 恵とチューしてぇ!」
     五条悟は黒羽寮の談話室でクッションを抱えてソファに沈み込んだ。長い手足は持て余し気味にソファの座面で寛いでいる。サトルは京都の旧家で生まれ育った為、足を下ろすよりあぐら座の方が落ち着くらしい。色素の薄い肌に地毛の白髪、青い目を保つ悟はハーフと思われることが多いが、両親ともに日本人、しかも日本の魔法族では御三家として名高い名家の出身だ。
    「……悟、付き合う方が先じゃないのかい?」
    「わぁーってるーって!」
     五伏学園、別名マホウトコロと呼ばれる魔法学校に在籍する十四の悟は今、絶賛片想い中である。
     初等部から付き合いのある夏油傑は、めんどくさそうにスマホをいじりながら言った。長髪をお団子にまとめ、たらりと一房前髪を垂らすスタイルは学年一胡散臭いと言われる男だ。
    「伏黒さんは悟のことを手の掛かる弟くらいに思っているんだろう?」
    「んな事ねーし」
     伏黒……伏黒恵とは悟が初等部一年次から思いを寄せる相手だ。在校生との初顔合わせでいきなりプロポーズしたのを皮切りにさとるが何度もちょっかいをかけているので、この学園でその関係性を知らない者はいない。
     マホウトコロは日本の学制に則って、私立中高一貫、全寮制の学校として太平洋のとある島に設立されている。有名なイギリスのホグワーツとは違って、一学年でも三十人ほどしかいないし、寮は悟と傑のいる黒羽寮と恵のいる紅鶴寮の二つしかない。傑と一緒の量は嬉しいが、恵と離れているのは本当に辛い。組み分け帽子を呪いたい気分だ。お風呂上がりの恵とか、あわよくばうっかり間違って恵のベッドに潜って寝ぼけてポワポワしている恵とかに遭遇したい。
    「今日も恵は可愛かった」
    「あーそう」
    「魔法動物学の実習の時の恵はさ、ちょっと笑うんだよ。ふわっと綿菓子みたいに可愛く笑うの」
    「授業サボって覗きに行ってたのか? ストーカーだろ、お前」
     カウチに寝転がっていたクラスメイト、家入硝子はココアシガレットを咥えている。学園内は禁煙で吸ったら魔法でバレてしまうので、寮に入ってからはタバコではなく何か菓子を食べていることが多い。
    「サボってねーし! 飛行術の実習の時空から見えたの!」
     魔法動物学も飛行術も、外でやる実習が多い。悟は飛行術を得意としているため、いつも皆より早く高く飛んで、自由を楽しんでいる。一年時のように先生が引率するのを追いかけて飛ぶのではなく、学内に設けられたチェックポイントをオリエンテーリングのように巡って、獲得したポイント競う授業だった。早く高く飛べる五条は飛行術実習のゲームで一位以外を取ったことはない。
    「今日は鵺との対面実習らしかったんだけど、恵がさぁ、鵺の頭をクシャクシャしながら微笑んでてさ。めちゃくちゃ嫉妬した!」
    「付き合ってもいない五条に嫉妬する権利はないだろ」
    「言わないでっ! 傑と硝子は俺の恋路を応援してくれないの」
    「お前ガキだからな」
    「私は伏黒さんの味方だね」
    「んぐぅ……」
     悟は中等部三年になったばかりで、恵は高等部三年だ。学年も寮も違う悟と恵は、日常の接点が少ない。何せ初等部一年から口説き続けているので恵どころか、周囲の人間までただ憧れているだけだと思っていた。実はガチ恋であることを知っているのは悟の親友の傑と硝子くらいなのだ。
    「俺は考えた!」
    「やめた方がいいんじゃない?」
    「いや、せめて話くらい聞けよ! 俺はアジア地域交流戦のダンスパーティーで恵を誘う!」
     アジア地域交流戦とは、ホグワーツ、ダームストラング、ボーバトンによるヨーロッパの魔法学校の代表者が行うトライウィザードトーナメントのアジア版である。三年に一度開催されるもので、トライウィザードトーナメントと異なり代表三名がチームで争う競技だ。今年は三年の伏黒恵、虎杖悠仁、釘崎野薔薇の紅鶴寮の三人が予選で黒羽寮の東堂葵、西宮桃、加茂憲紀を破って出場を決めた。そのアジア地域交流戦では期間中にダンスパーティーが開かれるのだが、そこで誰が誰を誘うかがその時期の生徒たちにはいちばんの関心事となる。
    「確か三年前は真依さんに誘われていたね」
    「親戚だし、ノーカン!」
     真依……禪院真依は伏黒の親戚で、日本の魔法界の御三家の一つ、禪院家の出身だ。もう一つの御三家は、加茂憲紀を次代当主と定める加茂家である。伏黒は父親が婿入りした外戚であるため、禪院家とは距離を置いている。
    「三親等以上離れていれば結婚できるぞ、五条」
    「そーゆーのじゃないでしょぉ!」
     真依の方はともかく、恵にそういう感情はないと悟は確信していた。禪院家次期当主の直哉(クソほど性格が悪い)から逃れたい真依に頼まれたからだと悠仁が教えてくれたのだ。
    「まずは悟を恋愛対象として意識してもらうことからだね。まずは俺、って一人称を僕や私に変えることから始めたらどうだい?」
    「そう言うのって重要?」
    「当たり前だよ」
    「私は興味ないな」
    「硝子ぉ!」
     こうしてなんだかんだと悟に甘い傑と硝子の協力で、一緒にダンスパーティーに行こう作戦が開始されたのだった。



     傑に言われたのは、まずは悟が成長したという印象を与えること。恵は悟を可愛い後輩と思っていて、悟の恋愛感情を本気だと思っていない節がある。そう思わせる理由は、恵が恋愛に全く興味がないのが半分、悟が小学生みたいいな言動をとることが半分らしい。まずは自分でどうにかなる、悟の態度を改めることから始めようという話になったのである。
    「恵、僕の買い物に付き合って欲しいんだけど」
     日曜日の昼過ぎ、昼食を終えた恵が図書室で自習しているところで悟は声をかけた。恵はクソ真面目で、成績トップを中等部から高等部までの六年間一度も明け渡した事はなかった。図書室に行けば大体捕まることが多かった。
    「俺と行っても面白くないだろ。夏油といけよ」
     全く釣れない相手である。誘うのが友人だったり野薔薇だったらめんどくせぇとか言いつつ、二つ返事で一緒に行くことを知っている。見かけによらず恵は付き合いがいいのだ。傑と行け、というのは悟と傑の仲の良さを知っているからだからこそではあるが、悟がわざわざ誘った意味をわかってほしい。
    「寮のやつらはクディッチの練習で高等部二年の先輩に捕まってんの。明日魔法薬の授業で使うもの傑の分も頼まれたんだけど、購入個数制限がある薬草だから同行者いるんだ」
     魔法薬の授業では毒を含む危険な薬草を使うことがあるが、そういったものは安全な量しか買えないようになっている。
    「はぁ? もっと早く準備しておけよ」
     伏黒の予定を把握した上でのお願いである。本当は硝子が大量にキープしている薬草があるためそこから貰えばいいのだ。
    「そうだけどさ、無いと困るし。なぁ、恵、僕に付き合って」
     コテンと首を傾げた悟に、恵は盛大なため息をついた。小さい頃から当主として甘やかされてきた悟のおねだりスキルはカンストしているので、見た目の冷淡そうな印象と違ってチョロ……いや親切な恵なんて簡単に引っかかってしまうのだ。
    「仕方ねぇな」
     ため息を着きながら恵が立ち上がると、紅鶴寮のローブがしゅるりとなった。本を読むのにふせ気味になっていた瞼が上がると、長いまつ毛の下から翠の目が覗く。悟自身青い目が美しいと言われることが多いが、恵の目の美しさには目を見張るものがあった。恋の魔法が効いているだけかもしれないけれど。
    「なんだよ」
    「……一人称変えたんだな。お前、圧が強いから、いいと思うぞ」
    「おう」
     ちゃんと気づいてくれて嬉しい。恵は変えないの?と聴けば、他人に関わるのは面倒だから怖がられるくらいで丁度いい、とか言う。だけど、恵は親しい人間はとことん甘い。それが自分にも向けられることが、悟の自尊心を擽る。
     三十分後に校門前集合、と言われて悟はスキップでもしたい気分だ。紅鶴寮のカラーが朱鷺色だから、黒いローブの裏地は鮮やかなピンクだ。恵がじゃあとで、と手を振って踵を返すと、面倒の白い肌に翻るピンクの生地が映えてとても美しいと思う。
     制服では目立つから、と私服で待っていると、黒いゆったりしたニットにカーキのカーゴパンツという、全く色気のない服装で恵が現れた。やっぱり恋愛対象として意識されていないことにがっかりする。
     ポートキー経由で綾織横丁に辿り着けば、今日も人混みで溢れかっていた。目的の店への階段を登りながら、恵はふと悟の方を振り返った。
    「何?」
    「お前、大きくなったな」
     初めて会った一年生の時は20センチ以上あった身長差が、今はもうほとんどない。
    「多分お……僕の方が恵より大きくなるよ」
    「そうだな、楽しみだ」
     さっと風が吹いて恵みと悟の髪が揺れた。恵は悟の首元に巻いたストールがハタハタゆれたのを薄い手で抑えた。肩に恵の温度を感じ、それから柔らかい眼差しが向けられて、悟は胸を締め付けられたような気がした。
    「恵、僕は恵が好き」
    「おう。俺も好きだ」
     でもそれは恋じゃ無いじゃないか! 恵に好きと言われたのに詰りたいような気持ちになって、肩に触れた手から逃げるように階段を登った。恵の手がするり、と空を滑ってすごく不思議そうな顔をして、だが何もわずに悟の後を追った。

     
     続く
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