五度目の人生で彼女は遂にフラグをへし折る知らない場所のはずなのに、どこか懐かしい気がしてアルシオーネは立ち止まる。
「そもそもここはどこなのかしら?」
朧げな記憶を辿ろうとした瞬間、創造主モコナの声が天上から響いてきた。
「スパロボTより召されしアルシオーネよ、ここはあの世だ。おまえがここに来るのは原作・アニメ・OVAに続き四度目だからな。知らないようで懐かしいのは当然だ」
そう、原作・アニメ・OVA・スパロボT全てでアボーンの運命を辿った彼女はあの世に来るのも四回目という、冥界の玄人なのだ。
「まぁ!ということは、ここにはザガート様もいらっしゃるのかしら?」
生粋の恋愛脳ゆえ、あの世と聞かされてもアルシオーネの頭にまず浮かぶのは愛するザガートのこと。
「あの男からの手紙を預かっている」
創造主が一通の封筒を差し出すや否や、アルシオーネは目の色を変え光の速さで奪い取る。
「アルシオーネへ
原作でもアニメでもゲームでもおまえの好意を利用してすまなかった。
後に出るスパロボ30でも私は相変わらずの最期を迎えるが、おまえはまさかの生存ルートを得る。
私のことは忘れ、今度こそ自分のために生きるのだ。まず恋愛依存はやめろ。私が死んだあとも私のことを想いながら生きるのはやめておけ。おまえの目の前にある現実を大事にしなさい。
ザガート」
あまりにも唐突な内容に頭がついていかないまま、次の瞬間彼女の魂は再び生者の世界へ舞い戻る。
気がつけば時は令和三年。
予言通りスパロボ30にはレイアース参戦。ザガートは死に、アルシオーネは死亡フラグをへし折る。五度目の正直とはこのことだろうか?
彼女はあの手紙をまだ大切にしまってある。しかし、
「私は、これからの残る人生をザガート様を弔う事に捧げよう」
と、ザガートの遺言とは真反対の決意を言ってのけるアルシオーネ。
そんな彼女の様子を天界から覗きこみ、やれやれ相変わらずだなとザガートはため息をつく。
その隣には、
「あの人はずっと貴方を想ってきたんですもの。すぐに貴方のことを忘れられなくて当然よ。心って不思議ね。自分の心なのに、自分でもどうすることもできないときがあるものね」
と、アルシオーネの姿にかつての自分を重ねて、まるで同胞を見守るような優しいまなざしで彼女を見つめるエメロードの姿が。
「あの世で愛する人と結ばれるのも悪くないけれど……彼女には亡き人を想いながら生きていくのではなく、他の誰かと恋に落ちて、愛し合って、あの世でなくこの世で幸せになってほしいわね」
終
アルの最後のセリフはスパロボ30に出てくる実際のものです!