Good-night Kiss「メタナイト、おやすみのちゅーして」
「?!……いきなり何を言い出すんだ。君は……」
いつも通りベットに二人並んで眠りにつこうとした時、カービィから言われたひとことのせいでメタナイトはすっかり眠気が吹き飛んでしまった。
「今日ドラマで見たの。ぼくもする!」
「………一体何を見ているんだ」
聞いているだけで背中がくすぐったくなりそうな内容だ。
「いいの!はやくー!」
カービィはそう言って一瞬恥ずかしそうにした後、目を閉じて唇を突き出した。
本人に言うと怒られそうだが、どこかちぐはぐな照れ方が子供っぽくて可愛らしい。
「……わかったよ」
メタナイトは少し呆れたような声でそう言うと、カービィに正面から向き合った。
カービィは目をつぶったまま唇を尖らせて待っている。
「………」
メタナイトはカービィの顔にそっと手を添えた。そして……
…………むにゅっ。
「?!」
まんまるのほっぺたを軽くつまんだので、カービィは驚いて思わず目を見開いた。
「……ふふっ」
その様子を見てメタナイトは吹き出した。
くるりとカービィに背を向け、肩を震わせている。
「もう!何笑ってるの!メタナイト!!!ちゅーは?!」
あまりにもメタナイトが笑っているので、カービィは頬をぷっくりと膨らませ、怒った。
「ふふふっ……すまない……つい、な……」
メタナイトは笑い過ぎて苦しいのか、途切れ途切れに答える。
「もー!ぼくは真剣なんだよ!!!」
「すまない………ふふっ……しばらく……落ち着きそうにないっ……先に寝ててくれっ……ふふふっ」
メタナイトはまだ笑いが治らないのか、肩を震わせたままそう言うと、ベットから起き上がった。
「ふーんだ!メタナイトなんてしーらない!」
メタナイトの様子にすっかり拗ねたカービィは、ぷいっとそっぽを向くと、布団を乱暴に引っ張ってその中にくるまった。
ぷりぷりと怒っていたカービィだが、その後はすぐに眠りについたのか、しばらくするとスースーと寝息が聞こえてきた。
メタナイトは椅子に座りながら、その様子をじっと見つめる。
(まったく……こちらの気も知らないで……)
メタナイトはため息をつくと、そう心の中で呟いた。
(寝る前にキスをねだる、か。ドラマではくすぐったいだけの展開だが、実際にされるとたまらないな……)
あのままキスしていたら、それ以上欲しくなりそうだった。
そんなぐらいカービィが可愛らしかった。
メタナイトはそう思ったので、思わずふざけるようなことをしてしまったのだ。
(……今夜は眠れそうにないな)
メタナイトは意を決してテーブルの上に置いてある読みかけの本に手を伸ばした。
end.