君のぬくもりに眠る「カービィ!待っていたぞーっ!」
「わあっ!どうしちゃったの?!メタナイト?!」
玄関に入るなり、いきなりメタナイトが飛び出してきたので、カービィは驚いた。
加えて、いつもなら頑なに外そうとしない仮面をすっかり取ってしまっていて、素顔だ。
「わたしはぁ……!待ちくたびれたーっ」
そう叫ぶメタナイトの頬はほんのり赤い。
「も、もしかして………?!」
カービィはメタナイトの背後に目をやる。机に空き瓶とグラスが転がっていた。
「メタナイト、お酒飲んだの?」
「……ああ」
「やっぱり……」
実はメタナイトは酒に弱い。
だから普段は飲まないようにしている。
たまに飲みたくなった時も、気をつけて一杯しか飲まないのだが、カービィがいないと寂しいのか、ついつい量が増えるらしい。
今までに同じようなことが一、ニ回あった。
「ごめんね……久しぶりにワドルディと遊園地に行ったからつい遊び過ぎちゃった」
「そうか……」
メタナイトはしょんぼりした顔をしてカービィを見つめた。
いつもなら仮面のせいでどんな顔をしているか分からないのだが、今は外している。
そして酔っているせいで表情豊かだ。
そんなたまに見せるメタナイトの素顔がカービィは好きだった。本人にはもちろん内緒だが。
「今度は二人で行こうね!」
「ああ!」
カービィがそう言って微笑むとメタナイトも微笑んだ。
しかし、酔いがだいぶ回ってきたのか、眠そうな目をしている。
「メタナイト、眠いの?」
「ねむい……」
メタナイトは目をこすりながらそう答えたので、カービィは肩を貸しながらベットへ連れて行く。酔っているせいで力が入らないのか、メタナイトの身体は結構重い。
なんとかして辿り着くと、横になったメタナイトに布団をそっとかける。
「これでよし!メタナイト、おやすみ!」
カービィはそう言ってベットから離れようとした。
「……待て」
「え?………わ?!」
ふいに、手を引かれたと思うとカービィはあっという間にベットの中に引きずり込まれてしまった。
先ほどまでの力無い様子が嘘のようだ。カービィはあっという間にメタナイトの腕の中に収まっていた。
酒で血行が良くなっているからか、メタナイトの身体はとても温かい。
「捕まえたぞ」
メタナイトが嬉しそうな声でそう言った。
「め、メタナイト……離してよー」
急に抱きしめられたせいでカービィはとてもドキドキしていた。心臓の音が聞こえてしまわないか心配で、ついそう言ってしまう。
「だめだ。離さない」
「わーっ?!!!」
そう言うとメタナイトはカービィの両手をベットに押さえ込んで覆い被さってきたので、カービィは思わず叫んでしまった。
「ちょ、ちょっと!メタナイト!!!何するの?!」
「なにする……か。君はどうしてほしい?」
そう不敵に微笑むメタナイトを見て、カービィは頬が一気に熱くなるのを感じた。
ごくりと唾を飲み込む。
「え、ええと……」
「言わないなら私の好きにさせてもらうぞ」
そう言ってメタナイトが目を閉じて顔を近づけて来たので、カービィも思わず目を瞑る。
しかし………
「………ねむい」
メタナイトはそう言うとカービィのすぐ隣に力無く倒れ込み、そのまま眠りに落ちてしまった。
「えー?!ちょっと!メタナイトー!」
カービィはメタナイトの肩をゆすったがびくともしなかった。
「もうっ!なんなの!メタナイトの酔っ払い!知ーらない!」
緊張した分拍子抜けしてしまったので、なんだか腹が立ってきたカービィはそう言って唇を尖らせた。
そんなカービィの思いなど露知らず、メタナイトは幸せそうな顔で静かに寝息を立て始めていた。
end.