逢瀬「メタナイト、きたよー!」
その呼び声とともに身体に重みを感じ、メタナイトは閉じていた目を開けた。
仰向けになっている自分の上に覆い被さるようにしてカービィがこちらを見下ろしている。
愛らしい姿、柔らかい肌の感触、体温。
何から何までカービィそのものだが、唯一違うのは瞳だ。
目の前にあるのは星空のような穏やかな青色ではなく、妖艶でどこか炎がゆらめく時のような輝きをもつ紫色。
それが目の前にいるのは本物のカービィではないということを示していた。
思い当たる理由はいくつかある。
カービィたちが暮らすポップスターから何光年も離れた星に、現在メタナイトは滞在しているのだ。
銀河をかける剣士として、魔獣を倒すために。
もう何日もカービィに会っていない。その寂しさから生まれた隙にある魔獣がつけ込んできた。
その魔獣は夢の中で標的に甘美な幻を見せ、誘惑する。
ある時は絶世の美女。ある時は宝の山。あらゆるものが目の前に現れた。
だがメタナイトは見向きもしない。魔獣はなんとか気を引こうと毎晩試行錯誤を繰り返した。
そしてついに正解を見つけてしまったらしい。
今の姿はまさにメタナイトが心の底から会うことを望んでいる、カービィそのものだった。
「……よく分かったな」
「本当大変だったんだよ。ここに来るまで…」
目の前のカービィはそう言うと肩をすくめた。
声から仕草まで本人そのものだ。良くできていると感心さえしてしまう。
「それはご苦労だったな」
「ね、遊ぼうよ!メタナイト」
カービィはそう言うと、頬をメタナイトの身体に押しつけるようにして、もたれ掛かりながら、潤んだ目でこちらを見つめてきた。
本当にこちらの嗜好をよく理解している。
メタナイトはごくりと喉を鳴らした。
「どうしたものか……帰ってから本物の君に浮気だとひどく叱られそうだが」
「何言ってるの?ぼくはぼくだよ。それに、ここは夢の中なんだから。大好きな人の夢なんて皆見るでしょ?」
カービィの瞳に宿った紫色の炎のような光。それはゆらゆら揺れながら、いつの間にかメタナイトの瞳を照らしていた。
「……それもそうか」
「決まりだね。今夜はいっぱい楽しもうね!」
「ああ……」
そう言うと二人は唇を重ねた。
自分はもしかしたら永遠に、この甘美な夢から目覚めることはないのかもしれない。
そう思いながらもメタナイトは今ここで自分に甘えてくるカービィの温もりに沈んでいった。
end.