Switchプロローグ
藍曦臣は、幼い頃から人に好かれる子供だった。天使のようだと評される際立って美しい容姿に、素直さと聞き分けの良さが合わされば、周りの大人たちはこぞって藍曦臣を可愛がった。それでも父と母は別邸にこもったまま見向きもしてくれなかったので、もっといい子にならなければと更なる努力を己に課したが、それが実らぬうちに火災事故であっけなく両親は他界してしまう。藍曦臣がまだ八つになったばかりの頃だった。
思春期を過ぎてダイナミクスがDomだと分かってからは、Subたちから熱い視線を受けるようになって、パートナーになって欲しいという申し出を星の数ほど受けた。誰か一人を選ぶことなどできなかったし、面倒を見てくれていた叔父からは他人に平等に接するようにと教えられていたから、断らずに全員と関係を持つことにした。そのやり方を了承し初めは喜んでいた彼ら彼女らも、藍曦臣が自分だけを特別視してくれることは絶対にないと気づくと悲しみながら離れていった。そのくせ何処か期待するように周りをうろつく者もいたけれど、藍曦臣が彼らを引き止めることはなかった。そのことを知った、パートナーが見つけられなくて困っているSubたちから、プレイ相手になって欲しいと請われるようになり、人助けと思って全て受け入れていると、いつの間にか沢蕪君という通り名がついていて希望者はますます増えていった。
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