おかえりの場所 すっ、と胸に深く空気を吸い込んだ。
室温は快適、掃除は、まあ、及第点。シンクや食器は念入りに磨いた。
何より俺の犬と、預かっていた浮奇の猫が、落ち着きなくそわそわしている。動物というのはすごいな。俺のサイボーグの能力を以てしても分からないことを、当たり前のようにやってのける。
いつでも連れて来られるようにと買ったキャットタワーの上で、猫はいつもと違う少し悲痛な声で鳴く。
「はは、君の主人を呼んでいるんだな、もうすぐか?」
犬は母の帰りを待ちきれない子供のように、窓に向かって大きな声で吠えた。
「こら、お前の主人は俺だろう?」
俺は笑いながら落ち着かぬ様子のその頭を撫でた。クンクンと、切なそうに鳴くから、彼にとって浮奇がどれだけ大切な人間なのか分かる。
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