あなたが望むもの(九条殿×玲姫) 夜の帳が下りると、どっと緊張感が増した。
今夜……だよね?
ほんのりと灯りが点る帳台の中で、身を固くして、九条殿の訪れを待つ。時が経つほど緊張感が増して、気を抜いたら倒れてしまいそうだ。
輿入れ後、初夜。
祝言はそれはそれは盛大に行われた。大国と小国では文化が違う。それは九条国と同盟を結んだ頃から思っていたことだけど、まさかここまでとは、と唖然としてしまった。
それもそうだ。だって、天下の九条殿が妻を娶るのだから。
その妻が私……で。
夫婦となって初めての夜、で。
つまり、そういうことだ。
「緊張する」
開いた扇子に額を預けて、深呼吸をした。
遠くで床板の軋む音が鳴ったのは、深く息を吐き出した時。たおやかな足音と共に、少しずつ軋んだ音が近付いてくる。
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