見えない傷痕光牙がリビングでうとうとしていると、脱衣場からガタン! という激しい音が響いた。
突然の騒音に眠気が一気に覚める。
たしか今は、樹が風呂に入っていたはずだ。なにかあったのだろうか? 光牙は急いで風呂場の方へと向かった。
「おい、大丈夫か!?」
ノックも忘れてドアを開けると、下にだけ衣服を身につけた樹が、床の上に蹲っていた。
「樹!!」
光牙は咄嗟に樹のもとに駆け寄った。
「白鷹さん……」
「お前、大丈夫か?」
「大丈夫です……。おそらく、軽い貧血ですから」
「なにかいるものあるか?」
「水を、持ってきてもらえますか?」
「水だな。ちょっと待ってろ」
光牙は一度脱衣場を出ると、冷蔵庫からペットボトルの水を一本取り出した。早足で風呂場に戻り、それを樹に差し出す。
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