☔️ ーー萩花州に良い店がある。
その話を聞いた時、鍾離は即座に行動に移した。集落から離れた場所にぽつんと佇むその店は、山野で採れた食材をふんだんに使った素朴な郷土料理が人気なのだとか。璃月港でも随一の目利きであり到底一般人とは思えぬ玲瓏な佇まいから琉璃亭や新月軒などの高級料理店を好むと思われがちな鍾離であるが、その実三杯酔や万民堂といった庶民向けの店にも好んで足を運んでいる。特に万民堂期待の看板娘である香菱が新作料理を開発したと腕を振るう折には、店先に嬉々として座する鍾離の姿を見ることができる。
そんなわけで、存外庶民的な味を好む鍾離にとって、その話は朗報以外の何物でもなかった。ちょうど久しぶりに璃月に戻ってきた懇意にしている執行官との会食を予定していたため馴染みの店から急遽予定を変更し遥々璃月港からふたりで件の店を訪ねたというわけだった。
1908