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    あきら

    @omoteakira

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    あきら

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    2539のモブ霊
    師匠にプロポーズしてOKを貰ったものの、その後の師匠の歯切れが悪く時間だけが過ぎてゆき…。
    茂夫の架空の同期が結構喋ります。

    前後編まとめてpixivにアップしました!
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20912076

    ##小説

    結婚するのやめましょうか「霊幻新隆さん、僕と結婚してください」
    そう言って僕は師匠の座る椅子の前に跪いて指輪の入った箱を見せながら、家の食卓で一世一代のプロポーズをした。師匠はびっくりし過ぎて椅子から転げ落ちて尻もちをついてしまった。
    「だ、大丈夫ですか…?」
    「な……おま……なん……なんて……」
    「霊幻師匠とずっと一緒にいたいです。僕と結婚してください」
    師匠と同じように床に膝をつき、わなわなと震える師匠の手を握りながら僕はもう一度プロポーズの言葉を言う。
    この人のことだから、きっと最初は否定の言葉が入るだろうと思っていたのに、師匠の口から出た言葉は、
    「俺でよければ……よろこんで……」
    だったので、あまりにも嬉しくて泣きながら師匠を抱きしめたら師匠も泣きながら僕を抱きしめ返してくれた。
    幸せの絶頂だった。
    これが一週間前のできごと。

    「僕、霊幻師匠のご両親へご挨拶に行きたいです」
    結婚をするのだし、僕と師匠のご両親へ結婚のご挨拶に伺わなくては。そう思って僕は霊幻師匠に話を切り出した。手土産は何がいいだろう?服装は?師匠のお父さんとお母さんってどんな人たちだろう。確かお姉さんがいるって言ってたな。…やっぱり緊張するな。粗相がないように頑張らなくちゃ…。
    なんて思っていたのだけど、師匠は、
    「……あ〜、うん、そうだな……」
    と言葉を濁しながら答えると、
    「また話通しとくからさ。もうちょっと待っててくれ」
    そう言ってこの話は終わった。

    そうしてなんだかんだと過ごしているうちにプロポーズから一ヶ月が経とうとしているのだが、驚くことにあれからなんの進捗もないまま現在に至る。師匠にはあれからどうですか、ご挨拶伺えそうですかって聞いてみたんだけど、あ〜うん……もうちょい待っててな、って濁されてばかりいるし、じゃあ僕の方の家族に先に会いませんかって聞いてみても、今ちょうど仕事が忙しくてな…落ち着いたらご挨拶に伺うからもう少し待っててくれ、と言われたきりである。
    あれ…結婚の流れってこんなものなのかな…結婚したことないからわからないや…。まあまだプロポーズから一ヶ月しか経ってないわけだし、お互い仕事が忙しい時期だって当然あるし、そんなに焦ることもないのかな。結婚するって言っても、正式に籍を入れられる訳ではないのだし。
    そうして気づけばプロポーズから二ヶ月が過ぎようとしていた。

    師匠とは僕の就職に会わせて一緒に住み始めたから同棲を初めて丸二年になる。今日まで特に大きな問題もなく上手くやれてると思ってたんだけど、この頃の僕らはちょっとギクシャクし始めていた。喧嘩したわけじゃないけど、なんとなく師匠と噛み合わなくなってるような…師匠が何か考え事をしているような、そんな感じ。今の僕らって、婚約者同士…ってことになるのかな?プロポーズって成功したんだっけ?二ヶ月前のできごとなんか無かったかのようにいつも通りの日々が過ぎていく。

    金曜日の夜、僕は会社の同期たちと飲みに誘われた。あんまりお酒は飲める方じゃないんだけど、せっかくだし、師匠にメールで断りを入れて会社近くの居酒屋へ久しぶりについて行くことにした。
    「影山ってさぁ〜彼女いんの?」
    あ〜それ聞きたいと思ってた〜!あんまりそういう話聞かないもんね〜!同期の子たちから次々と声が上がる。
    「彼女はいないけど彼氏がいるよ」
    隠すことでもないのでそう言うと、みんなが一斉にえっ!?とどよめき、その声で周りのお客さんから注目を浴びてしまった。
    「こ、声が大きいよ……」
    「いやすまん…そっか〜影山恋人いたのかよ…」
    「えっ彼氏ってどこで知り合ったの?何してる人?」
    「えっと、学生時代のバイト先の上司で、色んな人の相談にのったりしてる人…かな」
    「へぇ〜コンサルタント的な?」
    「どちらかというとカウンセラーかな…」
    流石に霊能関係とは言わない方がいいんだろうなと思って言葉を濁した。
    「バ先の上司ってことは年上だよね?いくつ?」
    「たしか今年で39だったと思う」
    僕がそう言うと、再びえっ!と声が上がり今度はみんなが周りを見渡してすいませんとポーズをとった。
    「39…ってことは14歳差?影山やるなお前…」
    「実はこないだプロポーズしてOK貰ったんだけど、そこから話が進まなくて…」
    それを話した途端、今日一番の、えっ!?という声がお店に響き渡った。
    「だから声が大き…」
    「えっ、影山くんプロポーズしたの?OKもらったの?影山くん結婚するの?」
    同期の女の子が食い気味に聞いてくる。
    「おいおい影山が一番恋愛に疎そうだと思ってたのにお前が一番先に結婚すんのかよ!すげえな影山!」
    おめでと〜とその場が祝福ムードに変わりみんなそれぞれお酒を手にして僕のグラスに乾杯をしてきた。
    「いやそれが、僕は結婚したいんだけど話がなかなか進まなくて……」
    「話が進まないって、ご両親に反対されてるとか?」
    「反対も何も会いに行かせてくれないんだよね。プロポーズしたの、もう二ヶ月も前のことなんだけど……」
    そこでみんな、えっ、と小さな声で驚きを口にする。
    「ご両親に会わせてもらえないの?」
    「うん。話をしてもなんだか歯切れが悪くて」
    「誠実な人?影山くん騙されてない?お金貢いだりしてない?」
    「してないよ。一緒に暮らしてるけど生活費は折半だし」
    同棲してたの!?とそこでもまた驚きの声が上がる。
    「他所で浮気してる可能性は?」
    「……たぶん無いと思う」
    今までの付き合いの中で、師匠は僕のことを師弟としても恋人としても大切にしてくれたと思う。大切にされてる実感があったから、僕は彼にプロポーズした。だから、そこは、彼のことを信じたい。
    「う〜ん、じゃあもしかしたら、彼氏さんはまだ結婚する覚悟を決めてないのかもしれないね」
    その言葉に、僕の胸はズキッと痛んだ。
    「あ〜ごめんごめん、別に結婚したくないわけじゃないと思うよ?現にプロポーズは受けてくれたんでしょ?」
    「……うん」
    「なら想いあってることは間違いないんだし、相手の気持ちの整理がつくまで様子みてもいいんじゃない?」
    「何?マリッジブルーってやつ?」
    「え〜でも二ヶ月って長くない?」
    みんなが思い思いの言葉を口にする。
    「みんなありがとう。やっぱり彼とよく話し合ってみるよ」
    うん、それがいいよね。応援してるぞ影山〜!そう言ってこの話は終わり、そろそろお開きということで僕達は居酒屋を後にしてそれぞれの家路へと解散した。


    夜風に当たりながら、師匠とのことを考える。
    師匠に告白したのは僕からだった。中学の卒業式と高校の卒業式、それぞれ告白しては振られてきた。
    「霊幻師匠、好きです。僕と付き合ってください」
    その度に彼は、男同士だとか年が離れてるとかお前はまだ子供だとか、あげくにその恋は勘違いだとか言って散々いなした。振られる度に僕は、もっと頑張って早く大人の男になろう。いいやつになろう。好きな人に振り向いてもらえるように。師匠のことを隣で支えられるように。そう思って努力を重ねた。勉強を頑張って希望の大学に合格して、身体も鍛えて新しいバイトも始めたりして。そうしてアタックし続けて二十歳の誕生日を迎えた日にやっと、俺もお前が好きだよ、の言葉を貰えたのだ。最高の誕生日プレゼントだった。
    霊幻師匠のことが好きだ。僕の人生に、なくてはならない人だと思う。これから先もずっと一緒にいたい。だから結婚したい。できれば自分たちの家族にも許してもらいたいし祝福してほしいと思ってる。
    でもそれは、僕の独りよがりな希望であって、現実の師匠はそんなことを望んではいないのかもしれない。
    師匠の本心は、このまま僕と二人、恋人同士でいるだけで満足なんじゃないだろうか。
    ……本当は、こんなに用事を先延ばしされて黙っていたのは、師匠に僕と結婚したくないんですかって、聞く勇気がなかったからだ。だって、僕と結婚なんかしたくない、そんなのいらない、って彼に言われたら、僕は……。どうしたらいいか、わからなくなる……。
    男同士だし、年が離れてるし、大人の男になろうって頑張ったけど、彼から見たらずっと子供に見えるのかもしれないし、師匠のそれは親しくしてきた子供への愛情であって、これを恋と呼ぶのは勘違いだったのかもしれないし。……障害が多いんだ、きっと、師匠の中で僕と一緒に生きていこうとするのは。
    もし、本当にそうなら、悲しいけど、僕に合わせようとして師匠の人生を犠牲にしてほしくはないから……僕から婚約解消を言わなくちゃ。たとえ結婚できなくても、師匠が僕の隣を選んでくれてるその間、そばにいられるのならそれでいいから。

    ある程度自分の考えがまとまったところで二人で暮らす家の玄関まで着いてしまった。
    時間は午後十一時。
    師匠はまだ起きているだろうか。
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