リラ「ゲストを呼び寄せてたにも関わらず、ゲストルームが無いなんてな」
「まあ、ここでのゲストルームは本棚だからな」
ローランがそう言いながら自身の部屋の扉を開けてくれる。その部屋に入る前からいくつもの本が見えて――、そしてオリヴィエはさっきの文句を取り消したくなった。
この図書館で過ごすローランの自室だ。かつて背中を守りあった戦友が、今はどんな司書として過ごしているのかずっと気になっていた。それが垣間見えるとなれば、むしろゲストルームが無くて良かったのだろう。
オリヴィエはこの図書館までハナ協会の指示で来ている訳ではなかった。多数の手続きを経て、個人の意志ではるばる外郭までやってきたのだ。協会の制服ではなく、私服でローランの部屋にあがるという行為はオリヴィエに遠く懐かしい過去を思わせた。
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