衣替え「あー、そろそろ衣替えの季節かぁ」
「は?なに?」
「ほらあれ、おまえ見たがってたろ」
冬が近づいてきた。ビルの合間を吹き抜く風は上着がなければなかなかつらい。今日は友人を訪ねてめったには足を踏み入れないNYの街へと降り立った。さすがは世界有数の大都市。人はわんさかいるしビルはそこら中にそびえ立っているしありえないぐらい物価が高い。片田舎では絶対に見られない風景だ。
そして密かに楽しみにしていたのはこの街の一番の見どころといってもいいあの親愛なる隣人だ。もしかしたら街を駆けまわるあの蜘蛛を見られるかもしれないとずっと期待していた。そしてその期待はあっさりと現実になる。
友人が指さした方向には人の合間を縫って走ってくる人影があった。よく見てみるとそれはテレビで見たままのスパイダーマンの姿だ。俺は初めての生のヒーローに歓喜の声をあげる。
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