SPICE 下校時間を知らせるチャイムが鳴った。
いつの間にか、廊下からは人の気配がすっかり消えていて、悠仁は棚を整理していた手を止めた。顔を上げた瞬間、開け放していた窓から少し涼しくなった風が吹き込んできて深く息を吸う。
今日はここまでか、と大きく伸びをした瞬間、扉がレールに沿って横滑りする音が響いた。
「ここにいましたか」
「七海先生、どしたんすか」
悠仁が目を瞬かせると、七海は大きくため息をつきながら眼鏡を押し上げた。呆れてる時にする仕草だった。
「もうすぐ施錠時間ですよ」
「あー、そうみたいっすね」
壁にかかった時計に目をやる。チャイムが鳴ったので大体の時間はわかっていたが、短針が七の数字にかかっていた。まだ外は明るいが、夏至もとうに過ぎているし、一気に暗くなっていくだろう。
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