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    SMITH

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    SMITH

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    L💛×S💜

    ※※
    💜が💛の仕事現場に遭遇するお話。

    ・CP要素ぬるめです。
    ・やんわりモブが死ぬ描写があります。
    ・某お披露目で拳銃持って脅してくる姿からの妄想です。

    ※※

    「ふう…依頼完了、かな?」


    冷たいコンクリートの上、静かに燃える炎を見つめながら、シュウは一息ついた。
    今日の依頼は至ってシンプルで、3階建てアパートの管理人から、屋上から変な物音がするため音の原因を調査してほしいとのことだった。
    別に何か事件が起きたわけではないのだが、住民が物音を気味悪がって早々に引っ越してしまうという。話を聞く限りは、鳥か猫か、もしくは何か“いた”としても現状は特に害はないモノだろう。


    深夜、住民達が寝静まり、静寂に包まれたアパートの階段をゆっくりと登る。屋上に着くと、まず目についたのは灰色のモヤだった。それは、まるで泳ぐようにゆらゆらと動いている。時折、手摺や放置された空き缶にぶつかり音を立てる。何をするわけでもなく、ただただそれは屋上を彷徨い続けていた。見たところ、あれが奇妙な音の原因に間違いなさそうだ。

    シュウは簡単な呪文を唱えると指先に淡い光を灯し、灰色のモヤ目掛けて放つ。命中した瞬間、それは一瞬にして紫の炎に包まれ、音もなく消滅していった。念のため、他に異常はないかと調べてみるが、特には無さそうだった。呆気ないが、これで依頼は完了である。



    既に時刻は夜中の2時を過ぎていた。依頼主への報告は明け方で良いだろうと思い、踵を返す。
    すると、アパートの下から何やら言い合っているような声が聞こえた。


    耳を澄ませながら狭い路地裏を覗く。街灯も無いそこは薄暗く、目を凝らして声のする方を見つめた。

    そこには、路地の行き止まりで叫ぶ男と、それに対峙するように立つ見知った背中の男の姿があった。



    「来るな!!情報は全部話した!もう良いだろう?!」

    「ああ、だがお前はまだ俺に言ってないことがある。違うか?」

    「し、知らない!何のことだ!?」


    そう言うと、シュウに背を向けるように立つ白い毛皮のコートを羽織った男は、壁際の男に銃を向けた。


    「西区の奴等に、今日俺がここでお前と取引をする事を話しただろう?」

    「なっ…!?」

    「ここで待ち伏せて、俺を殺そうとでもしたのか?だが残念…ここに来るはずだった奴等は、今頃海にでも沈んでるんじゃないか?」


    銃を突きつけられた男は、みるみるうちに顔が青ざめていく。
    男は口を震わせながら、言葉を必死に絞り出し抗議しようとした。


    「ま、まて、待ってくれ!俺は本当に何も知らないんだ…!信じてく…ガッ!!」


    しかし、虚しくもその声が彼に届くことはなかった。
    無機質な銃声が、冷たい夜空にこだまする。


    「…俺を貶めるにしてはツメが甘過ぎたな。」


    煙が出る銃口を下げながら、男は気怠げに首を回した。
    傍で動かなくなった男から溢れる赤を至極不快そうに見つめながら。



    そう、見知った背中の男というのは、ルカだった。
    ルカの本職がマフィアで、界隈を牛耳るほどの手練であることは聞いていたが、実際に仕事をしている姿は初めて見た。
    彼はシュウの恋人であり、シュウといる時のルカは常に明るく天真爛漫な人物であった。そんな彼が、仕事となるとこうも変わるのか。


    普段は絶対に見れないような姿に、一人感嘆する。仕事の邪魔をするのも申し訳ないし、早くこの場から去ろうと瞬いた瞬間、彼の銃口が自分に向いていることに気付いた。

    下から射抜くような視線。それなりに彼との間には距離があるのに、殺気がヒシヒシと伝わってくる。
    シュウはまるで肉食獣に睨まれた草食動物のように一歩も動けなくなった。
    心臓がバクバクとうるさい。全身から汗が滲んでくる。このままでは自分もそこの男のように殺されてしまうのか…?


    頭上では雲に隠れていた月が見え、2人の姿を照らす。
    なんとか震える手を挙げて、なるべくいつも通りに彼に声をかけた。


    「やあ、ルカ。…」



    ルカはシュウの姿を捉えた瞬間、先程までの殺気が嘘のように消え、満面の笑みを向けてくれた。

    「え、シュウ?!POG!」

    彼は素早く銃を懐に閉まうと、元気よく此方に手を振る。
    シュウはまだ少し緊張しているのか、手をふり返したいのに上手く身体が動かなかった。笑顔のルカの横には死体が転がっているそのアンバランスな光景にも少し困惑しながら、せめてもと控えめに笑顔を返す。


    「なんでここにいるんだ?あ、仕事か?俺も丁度終わったところだから、シュウも終わったなら一緒に帰ろうよ!」


    いつもと変わらぬ様子で無邪気に話しかけてくるルカの元に、黒服の男達が数人やってきた。
    近づいてきた彼等にルカは手短に指示を出すと、またシュウの方を向き直した。


    「おーい!シュウー?」

    「あ、…僕も丁度終わったところだよ。今そっちに行くから待ってて!」


    シュウは急いでアパートの階段に向かった。まだ少しうるさい心臓の音を沈めるように、深く深呼吸をしつつ、足早に階段を下りていく。

    一番下に着いて勢い良くドアを開けた瞬間、急に目の前が真っ暗になった。

    「わっ」

    「あー!疲れた!もうこんな時間だよー…眠い!」

    気づくと、目の前には逞しいルカの胸元がった。彼に抱きしめられているようだ。

    「…そうだね、いつもは寝てる時間だもんね。早く帰ってシャワー浴びて、ゆっくり休もうね。」

    「ああ!でも、シュウもだよ?今日は俺の家に泊まって行きなよ!」

    「んへへ、…じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな。」


    もぞもぞと体勢を整え、見上げた先にはルカの優しい笑顔。しかし、彼の身体からはほのかに硝煙の香りがした。チラリと横を見やると、黒服の男達が動かない男を黒い袋に詰めているところだった。

    シュウの目線に気づいたのか、ルカがゆっくりとシュウに目隠しをする。

    「シュウ、早く帰ろう。」

    「…うん。帰ろうか、ルカ。」


    シュウはルカに肩を抱かれられながら、その場を後にした。
    狭い路地裏を抜ける間、ルカはオーバー過ぎる身振り手振りを交えながら、今朝部屋にでっかい蜘蛛が出て大変だったんだ!なんて話している。


    フと、シュウは先程までのルカを思い出す。
    息が詰まるほどの殺気、鋭い視線。普段は絶対に見れない、かなりレアな姿を目撃したと思う。
    シュウには決してそういう気質があるわけではないけど、その冷酷な姿もちょっと良いなと思ったのは、また秘密の話。



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