淡雪に咲け【淡雪に咲け】
「フェンリッヒ様〜! ご要望の品、お届けにあがりましたッス」
「……ご苦労、下がれ」
手渡したイワシ10匹は報酬というよりも、むしろ口止め料の意味合いが大きい。規律正しく敬礼するプリニーに今一度、念を押す。
「改めて言うまでもないが……今回のことは綺麗さっぱり忘れる、そういう話だったな?」
「アイアイサーっス! もう何が何だか、すっかり忘れましたッス!」
足早に去っていくプリニーが完全に姿を消したのを確認すると、俺はドアの内側から鍵を掛ける。手塩に掛けて教育を施したプリニーであるとはいえ、所詮はプリニー。情報が漏れるかもしれぬという不安は拭い切れなかったが、いざとなれば片っ端から投げ付けて爆発させてしまえばいい、そんな目論見で、俺はとある品を秘密裏に手配させていた。
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