雨の日とハムスターぽつ、ぽつ、と。雨粒が戸を叩く。先程まで晴れていた空は一転し、灰色の雲があっという間に太陽を覆い隠してる。家で本を読んでいた管理人の女の子は雨の呼び声にふと、顔をあげた。
今にも降り出してしまいそうだ。
「あら、まぁ。大変」
管理人は読んでいた本を閉じると、真っ先に若草色のレインコートに袖を通した。ブーツに、ランタン。そして、少量のお菓子とナッツをポケットに入れて玄関の方へ。外へ出れば、土の香りが混じった湿り気のある空気が鼻腔を掠めた。
それでも、管理人は気にも止めずにまっすぐ森の方へ向かう。
ぽつん、ぽつん。
遂に耐えきれなくなった空から大きな雨粒が落ちてきた。途中で1枚大きな里芋の葉っぱを手に取った。管理人さんは、葉に跳ねる雨音に耳を傾けている。規則正しく鳴るそれは森の中では様々な物に跳ねて一つの歌をつくっていた。
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