天の末裔2※更新予定2章 夏の哀歌
青い空にくっきりと雲が映える、よい天気だった。洗濯ものがはためく路地を九歳のラファウは息せき切って工房へ駆けていた。
父ヤセクは腕の確かな職人で、同じ裏街に住む職人たちと組を作り、工房を共有しながら合金の細工を生業としていた。
父の手によって固い金属が飴のように伸ばされ形を変えていくのを見るのは、魔法のようで、幼い妹や弟たちと遊んでいるより、よっぽど面白かった。危ないから近づくなと言われながらも父に貼り付いて作業を眺めていると、あっという間に日が暮れてしまうのだ。
その日もいつものように工房の裏口から入って、作業場に忍びこもうとした。ふと、知らない声が聞こえてきて戸を開けようとした手を止めた。
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