食堂にはもち米の匂いと蒸気が満ちていた。蒸籠を総動員してフル稼働している結果がこれらしい。
皿の上には笹の葉で包まれた正四面体がうず高く積まれている。ちまき、という炎国の伝統料理だったはずだ。我が身を嘆いて川に身を投げた政治家の遺体が魚に食べられないよう、彼を慕う人々が投げ込んだとされる料理。とはいえ多種多様多国籍のオペレーターが多く集まるこのロドスではこの節句はお祭りごとの一つとして認識されているようで、厨房はその準備に大忙しだった。
積まれた一つに手を伸ばすと、一つだけにしておいてくださいよ、と湯気の向こうから声がかかる。見れば、彼が顔だけを向けてこちらを見ていた。手元ではちまきの成形に忙しい。
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