しのぶれど※何でも許せる方向け
ずっとずっと、恋をしていた。
…ずっとずっと、隠していくつもりだった。
人は誰しも秘密を持っている。今は神の身ではあるが慕情も例外ではない。神官で、かつ800年以上も生きていれば尚更だ。知られてもなんともない些細なことから、神界のどろどろとした知りたくなかった事柄まで大小様々な秘密を抱えて生きている。
その中にたった1つ、慕情には墓場まで持っていくと決めた秘密があった。
それは小さな小箱。見た目は精巧な寄せ木細工だが、地味であまり印象には残らない。掌におさまるくらいの小さな小箱だ。
この小箱には、慕情の恋が入っている。
しのぶれど
会合が終わったざわざわとした空気の中、この場に残る理由もない慕情は退出するべく門へと向かった。次の任務や霊文殿からの依頼について考えを巡らせていると声がかけられた。
11208