幼少期捏造イサミベビーと兄貴ーズ「隆二ー!俺んちこねぇ?」
「え、なんで」
「弟!!自慢させろ!!!!」
「それが主だろ…まぁいいけどさ」
ガッツポーズを取り行こうぜと呑気な声で歩き出す将希を慌てて追いかける。
中学校から20分程度のところに将希のうちはあり、ただいまーとでっかい声で玄関を開ける。
後ろについていき、お邪魔しますと声をかけると奥からおばさんが出てきていらっしゃいと笑顔で迎えてくる。
「こっちこっち!ほらほらうちの勇!」
「いさみ?うわ、ちっちゃ」
ベビーベッドですやすやと穏やかな寝息を立てながら寝てる赤ちゃんはむにむにと口を動かしてモゾモゾ動いていた。
「かわいー…」
「だろー?」
「将希ー!アンタ手洗ったのー?!」
「あ、やべ!」
俺も慌てて手を洗いに洗面所へ向かう。
しっかりと消毒までしてイサミくんが寝てる部屋まで戻る。
「へへ、寝ててもさ指握ってくんのよ。ほら」
すると小さい手のひらに指先をくっ付けると、きゅっと握り嬉しそうに顔が緩んでいた。
隆二もやってみろと言われて恐る恐るちょんっと突くとすぐ小さい指が握ってくる。
思ったよりもしっかり握られてびっくりした。
「でっかく育てよー勇ー」
「お前よりでっかくなったりしてな」
「やっぱそのままでいろ」
「無茶振りすんなって…あんまいじめたりすんなよ」
「しねーって!あ、起きた」
「あー、ぅ?ぱぁ、ぷぅー」
「なんて?」
「おはよーじゃね?おーよちよち」
「あぱぁ、ぷぷぷっ!あ、ぅーな、ぷー、ぷ!」
将希はイサミくんを持ち上げて抱っこしてあげる。
にぱにぱと嬉しそうに笑う顔に思わず俺も笑う。
「隆二も抱っこしてみ」
「うぇ?!まじでいってん、ちょちょ!うおぉ、おもっ…ちょ、ちょいちょい!」
「大丈夫だって、腕に頭と足乗せてー…あ、腕輪っかにするイメージな、下から支える感じでいけっから!」
「うぇえ?これであってる?え?大丈夫かよ?!」
「大丈夫大丈夫、ほーら勇ー!隆二だぞーにこにこしろー」
「無茶振りすん、うわわっ…なになに」
「あーぅ、ぱ、ぷぷっ!あぷっ!」
イサミくんは俺の制服のボタンをぐいぐい引っ張ってくる。
お気に召してしまったようで取ろうとグイグイと引っ張るが取れずに段々と涙目になってくる。
「ちょ、ちょちょちょっ、将希、ちょ助けて泣く!泣くっ!!」
「い、勇ー!それ取れないんだよー泣くなっー!なっ!なっ!」
「うぎ、ぅええっ、うゎあああっん!!!ぶぇっ、ぅぇええ!!あぁあっ!」
「ちょ、母さーん!!!!勇がボタンとれなくてないたっー!!」
「あーはいはい、勇ー?どうしたの、お兄ちゃんのボタンとっちゃだめでしょー?はぁい、よしよし」
慣れた手つきで俺の腕からイサミくんを取り上げてよしよしとあやすおばさん。
すると次第に収まりきゃっきゃっと喜ぶ。
「赤ちゃんわっかんねぇー…」
「気分屋さんなのよねぇ〜勇は。将希の時も駄々は凄かったけど」
「え、まじで?」
「本当よ、ただ夜泣きは全然酷くなかったからしんどくはなかったけども。勇は変なタイミングで泣くのよねー」
「あぅ?ぱう、あぁ〜、あぅま、まう、まう」
「お腹へったのかしら、ボタンがお菓子に見えたのかも」
「そんなことある?」
「テレビでクッキー出てたのよ。大はしゃぎしちゃって、だからよ」
「あーね、隆二ボタン生きてるかー?」
「生きてるよ、流石に取れてないって」
暫くあやしていたおばさんはベビーベッドにイサミくんを戻して晩御飯食べて行ってーと言われたので電話を借りて母さんに電話する。
『わかったわ、帰りはどうする?お母さん迎え行こうか?』
「んーいや、ヘーキ。チャリンコで来てっから、うん、うん…。大丈夫、わっーた。んじゃね」
受話器を置いたら、将希に呼ばれる。
「どうだったー?」
「晩飯いーよって、泊まらんけども」
「明日も学校だしなー、あ、やべ宿題してねぇ。隆二飯食ったらやろうぜ」
「おう、いいよ」
「まっ!」
「お、勇も宿題するかー?」
「流石にわかんないだろ」
「わかんねーだろー、天才かも。俺の弟だから」
「んな訳、おばさん呼んでるからいくぞ」
「おう、勇〜飯の時間だぞー兄ちゃんと一緒に食おうなー」
「まう、まっ!に、ちゃ!」
「にーちゃんだぞー!こっちは隆二なー」
「そういえば、イサミってどう書くんだ?」
「ん?勇気のゆうで勇。いいだろ?俺が考えたんだ」
「将希が?」
「そ!いいだろ?」
「由来はおばさんに聞くか」
失礼なやつめと尻を蹴られてリビングへ向かう。
カレーのいい匂いがして腹がなって2人で笑い合う。
将希は勇くんの面倒見てあげてるみたいで、先に勇くんのご飯を食べさせてあげていた。
「あら、将希いいわよ。ご飯食べちゃって」
「ん?へーきへーき、母さんと隆二先食ってて〜そんな時間かからんから」
そういいながらこの器用に勇くんを抱えて離乳食を食わせている。
俺はおばさんの手伝いをしながら話を聞いた。
「いつもなのよ、お兄ちゃんしたいみたいでねぇ」
「へー、そうなんだ」
「ほら、うちお父さんが自衛隊だから余計にかも。帰ってくる日も少ないし…って隆二くんのお父さんもそうだったわよね、大変でしょ」
「いや俺が1番下だから…まぁにいちゃんいるし…大変だけど大事な仕事なのは分かってるから」
「ふふ、そうよね」
盛り付けられたカレーを受け取りテーブルへ並べていく。
すると勇くんが気になって手を伸ばそうとしたが、将希が慌てて抱き上げ直し少し離れる。
「あぅっ!ぶー!や、たぅっ!!」
「残念、勇にはまだ早い!大人の味だからなー、もうちょいおっきくなってから」
「ぷぷっ…あぅ、あむ、んむむっ」
「美味いかー?美味いだろ」
「うきゃっ!んきっ!!」
「だよなー」
「なんだ、ちゃんと兄ちゃんしてんじゃんか」
「当たり前だろー?なー」
「んぷぷ」
勇くんはスプーンを咥えながらぎゅっと将希の手を握っており頬を膨らませていた。
ぷにぷにと丸いほっぺたをつつき、大きな目がこっちを向く。にまーっと笑顔になって、釣られて口角が上がる。
カレーが冷める前に慌てていただきますと声掛けて食べ始め、勇くんはあらかた食べ終えたのか将希が抱え直し背中をトントンと叩いている。
「げ、ぷっぅ」
「よーしよし美味しかったなーご飯。かあさーん、勇ベッドに戻してくるー!」
「はいはい、気を付けてね」
「ういー」
気を付けながら立ち上がり勇くんをベッドまで連れていく将希を見送りながらカレーをおかわりする。
バタバタと走る音を聞き、将希が戻ってきていただきまーすとカレーを食べ始める。
「あっためるわよ?」
「へーき、全然あったかいから」
「それじゃお母さん勇のことお風呂入れてくるから、隆二くんゆっくりしていってね」
「ふぁ、いっ、ありがとうございます」
暫くテレビの音が響くリビングで飯を食べて、将希がおかわりして食い終わるのを待ち少しくだらない話をしながら片付ける。
「美味かったー」
「んな、俺一生母さんの飯には敵わねえ気がするわ」
「あーなんかわかる、やっぱあれなのかな。すげーシェフとかもお母さんの手料理には敵わないのかな」
「負けるんじゃないか?原点みたいなもんだろ」
「だよなー」
なんてよく分からない会話をしながら今日出された宿題も片付けていく。
少し躓きながらも、なんとか解けて気がつくともう18時半を過ぎた頃だった。
おばさんも風呂から上がってきたのでそろそろ家に帰ることにした。
「気をつけて帰ってね、また遊びに来てちょうだい。勇ー、隆二お兄ちゃんにばいばいはー?ほら、ばいばーい」
「またね、勇くん」
「う?ぁー、あう、ぁうっ!ぱぁ、ぅー!」
「んじゃなー、隆二!また明日」
「おう、また明日な、んじゃお邪魔しました」
ぺこりとお辞儀して、チャリンコに乗り自分ん家に帰る。
また、遊べるといいな。
□□□
「ポップコーン!!」
「ねぇ、なんであんたそのとうもろこしのお包みして高い高いするとポップコーンっていう訳?」
「え?だってポップコーンってとうもろこしじゃん?んで火通すと弾けるじゃん?それの再現!」
「…あ、そう…、それ隆二くんとかの前でやらないでよ」
「なんで、ほーれ!ポップコーン!!ぽっぷぽっぷこーん!」
「ま、楽しいならいいけど」
「うきゃ、いひひっ、あひっ、えひひ」
「たのしーなー、勇ー!」
「怪我しないようにねー、もう」