おとに、なる。耳をすませば聞ける音。
そばだてなくても届くこえ。
ふと目が合って驚いた。
ギターの弦に落ちていた、その目は何かに気づいたように持ち上がったから。
きょとり瞬いた。その瞳は不思議そうに眺めて。
「なに?」
不機嫌にも似た声が飛んできた。
「なにも…」
声にも出してないじゃないか、と。
口にしかけて首を傾げた。
「そっちこそ」
何よ?
こちらの方こそ不思議であると態度で示せば、ほんの少しだけ彼は逡巡したようである。
「なにが?」
「声」
「なに?」
「…しなかったけど」
「はぁ?」
「顔、あげたじゃない」
「…呼…んでねぇけど」
「誰が?」
「…誰でもいいだろ」
「何よー」
むぅ。と、頬を膨らませれば肩の上で相棒が「キィ」と鳴いてくれた。
彼の目がグババを撫でて、ぼりぼりと少し乱暴に彼の手が後頭部の辺りをかいている。
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