夏祭りカラン、コロン───
淡い光を灯し、薄暗闇に数多吊るされた祭り提灯。赤と白、二色の色彩で彩られた丸型のソレが未だ生温い熱を孕んだ風が吹き抜ける闇間にぼんやりと浮かび上がる。
カラン、コロン──
境内に敷かれた石畳。其処を歩む度に足元から聞き慣れぬ軽やかな音が鳴り響く。その音にさえ、普段と違った非日常の調べを感じられた。それは、自身の纏う衣服と相間って『特別な夏の夜』の雰囲気をより実感させてくる。
カラン、コロン───
幾つも建ち並ぶ、色彩豊かな屋台達。焼けるソースやバターの香ばしい薫りから、蕩けるような砂糖飴の甘い薫りまで。その何れも是もが等しく鼻腔と腹の虫を刺激して、されどれから食らおうか。
手始めに甘味から、いやいやそれとも塩味から。悩みは尽きる事を知らない。
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