有給消化した翌日、職場に顔を出したら課長の前に長蛇の列。
「おはよー、課長の握手会って今日だった?」
「おはよう、どう見ても違うな」
デスクに座りつつ問いかければ素っ気ない返事。始業前だと言うのにその指はキーボードの上を踊っている。
何々と覗き込むと、ゲートの魔力測定の誤りについて──という文章が見えてスンっと自席に戻る。
あー、会議資料今日までだっけ。
忙しそうな課長を横目にパソコンを立ち上げた。
なんだかんだと離席している課長に、確認したいことがあるのだけど一向に捕まらない。
席にメモでも置いておくか、とボヤけば同僚からツッコミがはいる。
「今日はまだマシだぞ、昨日はメモすら読まれてない」
「何かあったの?」
「……水篠ハンターがな、午後いっぱい課長を連れ出してた」
「あー、なる」
水篠ハンターが連れ出したとあれば誰も文句の言いようもないし文句すら出ないだろう。
「あれ? でもさ、処理が溜まってるってこともないな」
ペーパーレスを叫ばれて久しい昨今、作成した報告書は所定のサーバーに上げられ、読まれたら認証印が押された連絡が届く。
監視課のサーバーを覗いても未読は数件だ。
「それがさ、会議の合間に仕事してたみたいで……」
「ほーん、水篠ハンターが良いなら良いんじゃね?」
しかし積まれた仕事がない以上、提出期限も厳守なのだ。
面白くもない会議資料を作成し、確認事項の依頼を添えてサーバーになげた。
さ、あとは課長待ちだ。
***
一服から戻ると課長のコメント付きで差し戻されていて予想通り。
コメントの内容を確認して内容修正に取りかかる。会議資料なので印刷も必要だ。
タブレットで読めよなぁ、もう…。
ぶちぶち文句を垂れ流しながらお仕事はこなさなければならない。
修正を終えてうん…と伸びをしたとこに差し出されている手。
んん……とその手を辿ってその持ち主を見る。
課長だ。
伸びの体勢から椅子に座りなおしハンドシェイク。
そのまま手を振り払われた。
「会議資料を」
「今出しまーす」
そのままコピー機の方へ行ってしまう課長……くすん。
泣き真似をしたら同僚から冷たい目を向けられた。
「お前…怖いもの知らずだな」
「うんにゃー、水篠ハンターが居る時はしないよ」
そうでないとこうやって。
「こんにちは^^」
「どうも〜」
影からこんにちはされるのだ。
相変わらずおっかねぇ気配してると思いつつ、会議の用意してきます〜と逃げ出すしかなった。