お月見 今日は、妖魔の動きが活発だった。
翳りもなく見える丸い月に照らされ、次々と魔を屠っていく。生のあるものに群がり、取り付き、害を成さんとするそれを片っ端から鎮めていく。
一通り見回ったところで、少しばかり休息を取ろうと望舒旅館の露台へ戻ると、そこにはよく見知った影があった。
「鍾離様……」
「ああ、邪魔している」
露台の縁に腰掛け、空を見ていた鍾離様がこちらへ振り返った。眩い月が鍾離様の表情に影を落としている。なんと絵になる方だろうか。思わず感嘆の吐息を漏らしてしまったが、鍾離様はいつものようにウキウキと俗世の話をする雰囲気ではなく、少しばかり憂いを帯びた寂そうな表情をしていた。
いかがされたのだろうか。
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