少しだけ続きあれ、とディルックは夢見心地で違和感を覚えた。瞼は閉じたまま手をさ迷わせ、確かに隣にあった温もりを探す。しかし目当ての温もりはとうになく、ゆっくりと瞼を押し上げた。ぼやける視界のピントを合わせように何度か瞬きを繰り返して、首を持ち上げた。サイドチェストの上に置かれた小振りな時計を見れば、とっくに9時を過ぎていてディルックは慌てて飛び起きた。
「やってしまった…!」
今頃ワイナリーではもぬけの殻となったディルックの部屋でアデリンが仁王立ちをしている事だろう。闇夜の英雄業に勤しんだ帰りだったのもあって、当然ながらメモも何も残してきていない。
ベッドの上で頭を抱えたディルックは溜息を吐き出して、ポスンと枕へ倒れ込んだ。
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