無題 パシン、と乾いた音が部屋に響き渡る。Fulgurは痛む頬を抑え、今しがた起こったことを認識しようと、ふらつきながら前を見据えた。目の前の悪魔からはこれまで感じたこともないほどの怒気が漏れ出ている。
「顔をはたくとかシャレにならないぞ、特に今の時代ではな。」
「まだそんな減らず口が出てくるのか、お前は俺の怒りをこれっぽちも理解していないらしいな、そのオンボロな頭をもっと働かせてみろ。」
VoxはFulgurをきつく睨みながら普段よりも一段と低い声で言葉を返す。その様子にFulgurは息をのみつつ、負けじと言い返そうとした。
「確かに少し言い過ぎたかもしれないが、全て事実だ。だが、お前には分からないだろうな、いつだって特別な存在であり続けるお前に。」
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