astray moon「アヴェル」
ホームへと降りた瞬間に、私の名を呼ぶ声が聞こえる。
ぱたぱたと足を鳴らしてすぐ側へと駆け寄ってくる。
「さっき、貴方の好きな色の花が咲く花畑を見つけました。今度、案内したいです」
少し照れ臭そうにしながら私を誘う。
アヴェルの身長の方が高く、図らずも下からおずおずと強請るような表情を浮かべる相手に、内心参ったと思いながら微笑んで返す。
「…ふふ、楽しみにしてる」
不安げな面持ちであったその愛らしい顔が緩やかに嬉しそうな表情へと移り、喜びのあまりにアヴェルの手を取ったかと思えば大人しく横へと並んだ。
日々の責務とまではいかないが、二人は毎日の様に共に空を飛ぶ。各地に点在しているキャンドルに火を灯し、己の糧とする。
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