Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    ももたろー

    @mmtr_kandume00

    創作星の子達と載せにくいものをポイっとします。
    基本的に顔ありです。3L。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 8

    ももたろー

    ☆quiet follow

    創作ストーリーのプロローグ部分のSSです。

    #Sky創作_astraymoon
    skyCreation_astraymoon

    astray moon「アヴェル」
    ホームへと降りた瞬間に、私の名を呼ぶ声が聞こえる。
    ぱたぱたと足を鳴らしてすぐ側へと駆け寄ってくる。
    「さっき、貴方の好きな色の花が咲く花畑を見つけました。今度、案内したいです」
    少し照れ臭そうにしながら私を誘う。
    アヴェルの身長の方が高く、図らずも下からおずおずと強請るような表情を浮かべる相手に、内心参ったと思いながら微笑んで返す。
    「…ふふ、楽しみにしてる」
    不安げな面持ちであったその愛らしい顔が緩やかに嬉しそうな表情へと移り、喜びのあまりにアヴェルの手を取ったかと思えば大人しく横へと並んだ。
    日々の責務とまではいかないが、二人は毎日の様に共に空を飛ぶ。各地に点在しているキャンドルに火を灯し、己の糧とする。
    灯火は星の子にとって生きる原動力であり、またキャンドルは通貨のような役割も果たす。
    そして取り貯めたキャンドルは、自身を着飾るアイテムと交換することが出来る。
    そのキャンドルを集める為、二人は今日も空を飛ぶのだ。
    「では、行こうか」
    「はい」
    雨の降る樹林へと、二人は飛び立った。





    しとしとと降り続く雨の中、アヴェルは手を引く相手を気遣いながら道を進む。少し前までは右も左も分からない、生まれたばかりの星の子であった。光の翼もまだあまり回収出来ておらず、すぐに翼が減ってしまうのだ。
    灯篭で時折休み、効率の良いルートを辿りながら丁寧に道を進んでゆく。アヴェルがこうしてゆっくりと進むのには意味がある。まだまだ未熟であるこの愛し子に、灯篭や点在するキャンドルの場所を覚えてもらう為だ。特別言葉で何かを伝える訳では無いが、その意図を汲み取るかの様に隣でキョロキョロと辺りを見回しながら着いてくる。
    大きな蝕む闇を溶かす際には、順序がある事を以前教えてはいるが、足元がおぼつかなく蝕む闇の再生速度に追いつけずにいる事が多々ある。今回もそのようで、あたふたと上の方で右往左往しては火を灯していた。
    「こっちをお願い」
    片側を溶かし終えたアヴェルは下で再生を食い止めていたが、見兼ねて交代だと鳴いて呼ぶ。
    すみません、と申し訳なさそうに目を細め、こちらに降りてくるのと同時に、アヴェルはもう片側を溶かすために駆け上がる。
    慎重になるのは良い事だが…大きな蝕む闇を溶かし切るのは、こののんびり屋には難しい事かもしれない、とアヴェルは半ば諦めてもいた。
    雨林の灯火を全て回収し終え、ホームへと戻りキャンドルを精錬し受け取る。1日に15本ほど精錬できれば上々といったところか。まだまだ着飾るにはアイテムが少ない愛し子の為にと、日々灯火のかけら集めに励むアヴェルである。白色のケープが欲しいのだと意気込んでいた為、眠る前には毎日欠かさず贈り物も渡している。

    こうした日課を繰り返し、また幾日か経った頃。
    今日も出立するかとアヴェルは手を差し出したが、反応の無い子に首を傾げた。
    「…気分じゃないかい?」
    そう声をかけるとこちらを振り返り、逆に手を差し出された。何事かと数回瞬きをしたが、こちらに手を伸ばしながら少し頬を赤らめた表情をみて、アヴェルはそっと手を取る。何とも可愛らしいこと。
    「…っ、今日は僕がアヴェルの手を引きます」
    繋いだ手からは緊張が伝わり、こちらを見上げる表情からもそれは明らかである。アヴェルは優しく笑む。
    「ふふ、よろしく頼むよ」







    ゲートを潜り、目的地へと一直線で向かう。
    いつも繋いでいる小さなこの手から伝わる温度が、じわ、とこちらへ伝わるのがよく分かる。普段より幾分か温かいようで、緊張気味なのだ。
    そんな様子に、無意識のうちにアヴェルの口角が上がる。懸命に手を引く小柄なこの星の子に、愛しさが募っていく。
    「…こっち!」
    「ふっ…そんなに、慌てなくても大丈夫だ」
    笑いが漏れるのを抑えてはいたが、遂に堪えきれずに吹きだした。
    目的地は何処か分からないが、以前話をしていた場所だろうと予想はついた。そこへ連れて行くために、この愛し子は必死に前を走る。なんのための翼だろうかと思いはするが、その走る姿さえもアヴェルには眩しく愛しく映っていた。
    草原から道を戻る。開けた場所に、人気のない花畑が広がっている。小さな白い花が雲と調和し、風に揺れる。よく知る場所だが、気に留めて立ち寄る事は無い。改めて辺りを眺めると、心地の良い風が吹き、静かで美しい場所だ。良くもこんな場所を見付けたなとアヴェルは感嘆する。
    「アヴェルを連れて来たかった場所です」
    手を離して振り返り、くるりと回る。
    「白が好きだって、聞いてたから…ここはとっても美しい白が広がっていて、きっとアヴェルも気に入ってくれると思って」
    もじもじと照れながら、ここに連れて来たかった経緯を話す。
    この場所は一度通ってしまうと普段はあまり通らないところである。知る人ぞ知る、と言うのか、そういった類いの場所であるのだが、通い慣れた様子でこっちだと手招きをされる。花が集まる一角に招かれ、そこに座るよう促された。
    腰を下ろし辺りを眺めていると、愛し子も寄り添うように目の前へと座り込む。そわそわと落ち着かない様子だ。
    「素敵な場所へ連れて来てくれてありがとう。風が心地良くて、とても美しいところだ」
    アヴェルが礼を告げると、表情をパッと明るく変えて安堵し、満足気な様子である。その様子にこちらも満たされ、目を閉じて草花の間を風が通る音にそっと耳を傾けた。





    日常を繰り返し、愛し子の背に印された星の数もある程度増え、次の段階へと進む頃合いだなとアヴェルは思案する。まだまだ飛行技術も甘いが、翼の枚数も増えていけばカバー出来る部分も増えるだろう。そして、まだ経験したことのない暴風域へと足を踏み入れ、その道を進む厳しさやこの世界に生を受けた使命を果たす意味を学ぶのは今が適時ではないだろうか。
    だが、その厳しさや恐怖を経験し、己の使命を知り、空で眠り続けている他の星が数多とあるのだ。
    フレンドと他愛なく遊ぶ様子を眺めながら、どう伝えたものかとアヴェルは悩んでいた。
    他より幾らか臆病なこの子は、この理に耐えられるであろうか。暴風域の先を乗り越えたあと、生まれ変わった後も幾度と使命を果たす事を嫌がりはしないだろうか。
    例外は居れども、最初は多くの星の子が恐怖を覚える場所だ。この子の性格的にも不安が過ぎる。
    だが、いつか手に入れたいのだというケープは、星のキャンドルが必要である。星のキャンドルはそこへ行かない限り絶対に手には入らない。
    どうあろうが、いつかは連れて行かなければならないのだ。
    「難しい顔をしていますね」
    ひとしきり遊び終えたようで、アヴェルの元へと帰って来ては首を傾げる。何か悩みでもあるのかと心配そうな様子だ。
    「ああ、少し難しいな」
    そう苦笑いをすると殊更不安げな表情を浮かべるものだから、少し低い位置にあるその頭にそっと手を伸ばした。
    「そろそろ君も彼処へ行く頃合いかと思案していた。心配ないよ」
    「あそこ…ですか……」
    頭頂を軽く撫で、そのまま横髪を指で梳く。
    彼処へ、と聞くや否や、ゲートへと目配せをし身体を強ばらせていた。やはりまだこの子には早いだろうか。しまったな、と口にしてしまった事を後悔する。
    「わかりました…、心を決めておきますね」
    また明日に、と今日はもう眠りにつくようで、頭を下げて空へ帰ってしまった。良くもすんなりと覚悟を決めて暴風域へと行く決心をしたものだ、とアヴェルは呆気に取られる。
    これはいよいよ明日、愛し子を彼処へと導かなければならなくなってしまったようだ。だが、成長を見守りたい気持ちもあるが、どうにもアヴェルには彼処へ向かわせたくない気持ちが残る。
    …なにか、胸が騒ぐのだ。







    翌日。アヴェルがホームへ降り立つと、愛し子の星は既に光り輝いている。先に空から降りて来ているようだ。何処にいるのだろうかと向かおうとするが、なかなか愛し子の元へと行く事が出来ない。フレンドと共に何処かを飛んでいるのだろう。
    仕方ないな、とアヴェルは苦笑いをする。ふと思いつき、久しぶりに1人の時間を過ごそうと気に入っている場所へと向かう為にゲートをくぐった。背中には日頃あまり弾くことは無いピアノを背負い、急ぐことも無く。

    星月夜の砂漠。一面砂に覆われ所々に花が咲き、丘の上には古びたガゼボと少し霧がかった空間が美しい場所である。
    其処とは少し外れた丘の上にアヴェルは腰を下ろして景色を堪能する。こうしてゆっくりと何もせず過ごすのもどれ位ぶりだろうか。最近は愛し子と共に過ごす時間が多く、一人でいる事がほとんど無いのだ。
    持て余した時間をどう過ごそうかと思案した後、ピアノを背負って来たのだったと思い出す。久しぶりに触れる銀盤に少し躊躇しながら、一音。
    広すぎる人気のない砂漠にピアノの音色が微かに響き、風に掻き消えていった。誰に聴かせるわけでもなく、そのままゆっくりと、順に音を紡いだ。
    最初は耳にしたメロディを辿るだけの、演奏とは呼べぬ程度の些細なものだったが、徐々に音を増やして切ない旋律を奏でていく。たまたま通りがかった星の子がふと足を止め、耳を傾ける程には達者な演奏だった。
    しかしアヴェルは誰かと接する事が苦手であり、演奏が終わるとサッとピアノを背負い、足を止めていた星の子に頭を下げてそこから逃げる様に早足で歩き出した。
    人気のない所へ…なるべく他の星の子と接することのない所へ、とアヴェルは自身が焦っていることにふと気付く。
    普段隣にはあの愛し子がいつも居るからか、他の星の子と直接接する機会が少なくなっているのに気付き、悟った。誰かと接する事に苦手意識があるのを察してか、あの子が常に前に出て対応をしていたのか…。
    これは益々敵わないな、とアヴェルは心の中で苦笑いをする。ふとした日常の中でも、あの子に救われているのだ。
    今日の任務を何としても無事終わらせ、あの子の為に光の翼やキャンドル集めにいっそう励まなければと決意を固めた。






    ホームに戻ると、決意を固めた表情でアヴェルを待っていた愛し子がぱたぱたと駆け寄ってくる。遅くなったと声を掛けると、首を軽く横に振ったあと、そっと手を繋ぎアヴェルの横へと並んだ。
    「…お願いします」
    やはり緊張しているようで、少し震える声で呟いた。あの門の先は未だ体験したことのない困難が待ち受ける。最初は手を引かず導いてやるのが良いかと思案するが、暴風域は風が強いうえに流れる岩や崖も多い。この小さな身体は他よりも苦労するであろう。いつか導く側として成長する為に、ルートを覚えられるようゆっくり手を引いて進むことにした。
    暴風域の門を潜り、エリアへと続く道へ。光に包まれ、暴風域へと続く扉へと足を進める。
    これから待ち受ける試練を表すかのように、聳え立つ壁と巨大な扉。それを呆然と見上げる小さなこの子の手を、絶対に離すまいと強く握り直す。
    ゴォ、と強い風が吹く中、仕掛けへと火を点けていくと大きな扉が音を立てて開いた。
    周りの星の子達は慣れた手つきと足取りで進み出す。羽ばたける回数を表している背中の模様からしても、初心者では無いだろう。こちらを気にする間もなく、次々と荒れた空へ向かって飛び立って行く。
    「あんな、風の中を飛ぶのですか…」
    驚きと不安を滲ませた瞳が、空を見据えて揺れる。これは悪い見本を見せてしまったようだ。
    「ここを飛ぶのは手練た者達だ。こっちの道を行こう。君もいつか誰かを導けるようにな」
    ゆっくりと安心させるよう、深呼吸をさせてから、最初に歩むべき道へと手を引く。
    強風によって流れてくる岩を避けながら、安全な場所で立ち止まりつつ確実に進む。きつく握り返されている手を、再度しっかりと握り締めて。

    暴風域を乗り越え、暗黒竜のいるエリアも難無く進み終えて、いよいよ原罪へと続く廊下を進む。
    光の翼をひとつずつ拾いながら進むと、ついに使命を果たす時だと言わんばかりの異様な緊迫感に包まれる。
    「いこう。…踏ん張れるか?」
    アヴェルが振り返り、小さく震える愛し子へと声を掛ける。不安からなのか少し光が弱く感じたが、灯火が消えぬよう、支えてやれば問題はないだろう。
    ここを乗り越えて、更に世界が広がったこの空を共に飛びたい。この子が知らない場所へも連れて行くことが出来る。まだまだ教える事は沢山有るのだ。
    「…はいっ、行きましょう」
    意を決して、先へと足を踏み入れた。



    豪風。
    噴火により赤石が降り注ぎ、多数の星の子が光を失い石化している。辺りは地面が割れた上に水が広がり、僅かに足を取られるようだ。
    使命を果たす為には、この険しい道を進まなければならない。
    「……っ!」
    初めて目の当たりにしたこの光景に、今まで抑えてきた恐怖心が大波になり押し寄せてくるようだった。足が震え、思うように前へ進めずにいる。
    愛し子は己のコアを守るよう手を添えるが、アヴェルはコアの光が弱っているのに気が付いた。
    「…大丈夫、少しずつ進もう。私の後に続いておいで」
    なるべく落ち着いた声色で、優しく語りかける。不安げに目を細めるが、その小さな頭がこくりと縦に動く。ひとつずつ、ひとりずつ、被害を最小限に抑えながら、石化した星の子達を確実に救うのだ。
    アヴェルがコアから光の翼をひとつ、石化した星の子へと捧げる。少し痛みに似た衝撃が走るが、こうして記憶を渡すのはもう慣れたものだった。
    「星の子に記憶を還すんだ」
    それに続いて、愛し子も翼を捧げるようだ。コアから光を分ける。
    「…?」
    光を取り出そうとするが、手にする前に掻き消えてしまう。
    「落ち着いて、大丈夫だ」
    うまくコアから取り出せないのだろうと、アヴェルはとにかく落ち着かせようと声をかける。まだこの子には早かったか…と自省するがもう遅い。酷だが、ここまで来たらやり遂げねばならない。
    もう1つ先の石化した星の子の元へ、翼を渡そうと足を進める。
    「……っ、アヴェル…」
    助けを求めるか弱い声は、豪風と共に赤い石が降り注ぐ音に掻き消え、アヴェルの耳には届かない。
    コアから光を取り出し、それを石化した星の子へと還したようだが、何やら様子がおかしいのに気付く。
    「…?!」
    愛し子のコアに、光が灯っていない。
    「ぁ…あれ……?」
    身体がずっしりと石のように重くなり、たまらず膝をつく。視界は暗く霞み、前が良く見えない。
    使命を終えたにしては早すぎる。まだ、1人目なのだ。
    急いで愛し子の元へと向かうが、その瞬間目にした光景にアヴェルは絶望した。
    愛し子のコアから、闇が吹き出し始めていたのだ。見る見るうちにそれは大きくなり、震える身体を蝕んでゆく。
    小さな手がこちらに伸ばされる。石化してゆく身体に、パキ、と音を立てて亀裂が入る。
    「アヴェル…怖いよ…」
    耳に届いた声が震えている。
    ああ、なんて事を。私は間違っていた。
    君をここに連れて来るべきではなかった。
    闇に呑まれてゆく小さな身体を守りきれない。
    不甲斐ない私を、許してくれ。


    「エダ…!!!!」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works