夏の日。少し蒸し暑い夜に、小さな相棒が窓からふわりと入ってくる。
「仕事?」
人型が僕の手のひらに収まる。紫色の炎でそれを燃やしてやると、日本語でも英語でもない、人間の言語ではない文字が現れた。
「『○○区△△町ニ人ナラザルモノ出現。直チニ祓除セヨ』。全く、人使い荒いなあ。」
ため息をつきながら普段着のスウェットから正装に着替える。
「ありがとね。」
せかせかと準備を手伝ってくれていた人型たちに礼を告げ、窓から飛び降りた闇ノシュウは、呪術界きっての特級呪術師である。昨夜も隣町でそれなりの相手と応戦して負った傷の治りを、お盆が迫る夏の繁忙期は待ってはくれない。
「全く呪術師ってブラックな職業だよね。」
などとブツブツ言ってているうちに目的地に辿り着いた。
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