親指に刻んで 疲れて眠たい目を擦りながら教科書を引っ張り出す。 放課後の部活が終わって帰ってきたら早く寝たいし好きな事だってしたいのに、宿題がそれを許してくれない。 明日は厳しめの先生の授業だから、ちゃんとやらなきゃ。 サボったりしたら北島先生の耳にも入ってしまう、それだけはマズイ。
始めてしまえば早いものでスイスイと半分くらいまで終わった。 よし、終わる、頑張ろう。 そう気合いを入れたところで携帯が震える。 新着メール、慶一だ。
〈見て! がんばった!〉
その短い一文に添付された写真を開くと、トランプで作ったタワー、五段。 地味にすごい。 すごいけどコイツ絶対宿題やってないべ。 ひとまず何か反応してやるかと思って〈す〉と打ったところで思わず奥歯を噛み締めた。
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