✉️特に予定もなくうだうだと過ごす休日の昼過ぎ。
さて、どうしたものか、買い物でも行こうかと頭の中でだけ思いながらも、暖かい春の陽気についぼんやりとしていると、普段あまり使わないスマホに恋人からメールが届いた。
急いでソファから飛び起き、メールを開く。
『Olá 急だけど良い酒が手に入ったんだ。
一緒にどう?
君さえよければ、今夜
読んですぐに『OK!』と返そうとした。ホセの選ぶ酒はもちろん、作るつまみも美味いし、恋人と会えるんだから、『NO』なんて答えはまずありえない。
だが、少し違和感を感じた。
メールの文が少し変だ。
いままでも何度かホセから付き合う前も、後も呑みの誘いメールを貰っていたが、こんな感じではなかったはずだ。
うーん、と首をかしげ、メールの文面を指でなぞっていると、横にスクロールが出ていることに気づいた。
おや?と思い、スクロールするが、白いままの画面。ミスか?珍しい。
そう思ったが、ミスではなかった。
最初の文よりだいぶ下にあった。
「バツ…?」
×が3つ。×××。
だいぶ久しぶりに見た表現だから、最初はわからなかった。
だからわかった瞬間、スマホを放り投げて家を飛び出した。
「パンチート?どうしたんだい、急いで」
急いで駆けつけた俺に不思議そうなホセを、我慢出来ずに玄関で抱きしめ、頬にキスを3回。
驚いて目をまん丸にしたホセを抱きしめたまま片手で玄関を閉めた。
「君が先にしてくれただろ?メールで」
「きみ、気づいたの?」
「気づくさ、文面がいつもと違った」
さらさらと髪を撫で、少し赤い頬に触れると、気恥ずかしさからか少し下に視線を落として。
「ねぇ、パンチート」
不意に名前を呼ばれて顔を覗き込むと、厚い瞼をとろんと落とした、彼お得意の色っぽい上目遣いで、甘く囁く。
「僕は、口にしたつもりだけど?」
心の中でだけどもらったメールに『NO』と返した。
残念ながら呑むのは明日になりそうだ。
1、2、3…いや、もう既に3回をとっくに超えてしまったキスを数えながら抱き上げた愛しの恋人と寝室へと急いだ。