景儀と阿願と羨羨藍景儀はその日、朝から緊張に体を固くしていた。
父上に手を引かれ、来年から座学を教えてもらう藍先生へ挨拶へ行く。
普段、大変元気の良い少年である彼は、今日は黙って大人しく付いてくること、藍先生は非常に厳しい方だからしっかり挨拶をし礼儀正しく振る舞うこと、そして決して傍を離れないようにと言い含められていた。
そうしてやってきた室で相対したのは、にこにこと穏やかな空気をまとった宗主と、その隣で鋭い目を向けてくる藍先生。
目線に竦みつつも、先生が撫でつける度よんよんと揺れるお鬚に釘付けになっていると父上に肩を小突かれた。
慌てて、教えられた通りに拱手する。
「藍宗主、藍先生に藍景儀がご挨拶申し上げます。」
噛まずに言えたし、なかなか上手く出来たんじゃないだろうか。
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