陽が沈む 戦に明け暮れて、日が沈めば怪我人に手を貸しながら麓の城へ帰る。常興は夏の遅い日暮れを見ながら、いつまでその赤い光が続くのかと思った。足が重い。疲労よりも、先に見えない戦いに心が疲弊していた。
遅れていた兵舎もようやく建ったが、そこへ詰める兵でまともに戦える者は少なかった。怪我と疲労、さらには残り少ない兵糧のために減る食事。そのために士気は著しく低く、兵舎は暗い空気の中で不満の声がそこかしこで上がっていた。常興は激励の言葉をかけるが響かない。向けられる視線に不満が滲んでいた。
倒れた貞宗は未だ回復の兆しがない。常興は鎧を脱ぐと汚れた直垂を着替えて、貞宗の部屋へと向かった。良い報告は一つもない。
部屋の前まで行くと貞宗についていた者が頭を下げた。今日の様子を手短に聞き、戸を開く。部屋の中央で貞宗は寝かされていた。
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