悠久の流れのほとりで「また、一緒に旅を始めましょう」
封印から解き放たれた悟空に、わたくしは微笑んで手を差し伸べました。
輪廻の旅は、絶望の果てから始まりました。
天竺への道のりも後半にさしかかったある山で、わたくしたちはそれまで退けてきたものとは桁違いに強い妖怪と遭遇したのです。
ひとり、またひとりと仲間が斃れてゆき、最後に残ったのは一番弟子の悟空でした。
その悟空もわたくしを庇って斃れてしまいました。わたくしにはなす術もなく、鋭い爪に身体を引き裂かれるのを待つばかりと思ったその瞬間、眩い光があたりを包みました。
あまりの眩さに御姿を見ることは叶わずとも、それは観音様の御力であると瞬時に理解しました。
曰く、この旅の過程そのものが修行であり、幾度繰り返しても本懐を遂げよとお釈迦様は思し召しでいらっしゃるとのことでした。
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